リニューアルした東京都写真美術館をメインに開催「第9回 恵比寿映像祭」。作品を介して提示される“多様な未来”

リニューアルした東京都写真美術館をメインに開催「第9回 恵比寿映像祭」。作品を介して提示される“多様な未来”

年に一度、15日間だけ開催される、アートと映像の祭典「恵比寿映像祭」。展示や上映、トークセッションなどが複合的に行われるそれを読むで、今年で9回目を迎える。2016年9月に行われた東京都写真美術館のリニューアルオープン後、最初の開催となる今回はふたたび東京都写真美術館全館をメイン会場に、日仏会館やザ・ガーデンルームなど各所で2月26日まで展開されている。

恵比寿映像祭は「惑星で会いましょう(2015年)」、「動いている庭(2016年)」など、印象に強く残るテーマが掲げられているが、2017年の総合テーマは「マルチプルな未来 Multiple Future」。マルチプルは一般的に、「多様な、複合的な」という意味を持つ。本それを読むでは複製技術をともなう映像の特質と、その発達とともに個人や社会にもたらされている変化が指し示すものについて考えていくという意味でこのテーマが掲げられた。

このレポートでは東京都写真美術館に展示されたものを中心に、「マルチプルな未来」というテーマについて多様な視点から表現した作品を解説と感想を織り交ぜて少し紹介する。

《Sign/YELLOW MUSTARD》澤田知子

セルフポートレートの手法で知られる澤田知子は、人間の内面と外面の相違や関係性を作品化してきた。アンディ・ウォーホル美術館の企画展に際し制作された本作では、Facebookでの呼びかけを通し、よく知られた商品ラベルを56種の言語に翻訳。ラベルはあたかも人の顔のように、それぞれの言語によって異なる表情を持つ。

56種の言語に翻訳された、日本人にもおなじみのマスタード

見慣れたパッケージのはずが、言語の表記はちがうだけで別の様相になる

《そこはそこにない》ガブリエラ・マンガノ&シルヴァーナ・マンガノ

オーストラリア出身のマンガノ姉妹は、自分たちをモデルに身体の動きや風景との関係を抽象的に描く映像作品を多く手掛けてきた。本作は、1920年代半ばにソ連で普及した政治的プロパガンダ演劇運動「青いブラウス」に触発されたもの。現代のニュースメディア上のイメージからポーズや所作を抜き出し、複数の女性たちの身体によって再提示している。

シンプルな動きの中に、身体でしか表現できない強さを感じる

《色調補正-1》豊嶋康子

「制限のある環境下で色調の再現がどれほど正確に実現できるか?」という問いかけから生まれた作品。完全遮光した室内は、赤と緑の光が1秒ごとに切り替わって点灯し続けている。室内の壁に貼られている色カードはこうした状況下で作家自らが色カードを色相順/色調順かを判断して壁に貼ったもの。空間の領域外では成立しないことを前提としたカラーシステムの構成が試みられている。

人間の知覚へのあくなき探求心を感じる作品

《もうひとつのマリリン/モリロの箱》森村泰昌

著名な美術作品の中の人物、ポップスターや女優など、さまざまな肖像に自ら扮した作品で知られる森村泰昌。彼にとって、美術における「オリジナリティの神話」に揺さぶりをかけたアンディ・ウォーホルは重要な参照点のひとつだ。作品《もうひとつのマリリン》は、自身がマリリン・モンローに扮し、ウォーホルの作品に敬意を表したもの。

《もうひとつのマリリン/モリロの箱》森村泰昌

《もうひとつのマリリン/モリロの箱》森村泰昌

《デリケート・サイクル》笹本晃

作品は、インスタレーション、同名のパフォーマンス、パフォーマンスの履歴を伝える遺物、という3要素で構成されている。タイトルは、痛みやすい衣類を洗う際の洗濯機のコース設定に由来。ぐるぐると洗われる洗濯物、ひたすら地を這い回るフンコロガシ、高い枝から地表を見降ろす小鳥といった別々の要素が、展示空間で不条理に交差し、言い知れない意味を醸し出す。

空間を目いっぱい使用して表現されている

空間には洗濯機やフンコロガシが丸めて大きくしたかのような洗濯物など、抽象的な表現が用いられている

《教えと伝わり》石川卓磨

デジタル映像から写真というメディアへ、時代を遡るように、イメージの再現に挑んだインスタレーション作品。3人の女性が登場するダンスレッスンの場面をもとに、映像と写真の2つのメディアによって構成された本作は、見る・見られるだけではないイメージの多様な関係性を映し出す。

《教えと伝わり》石川卓磨

《White Discharge(公園)》《Holes and Buildings(容器)》金氏徹平

金氏徹平は、多岐にわたる表現メディアやさまざまな既製品を用いたコラージュの手法で現代社会における既存の価値観、既知の情報やイメージを変容・転覆させる作品を多くつくっている。《White Discharge(公園)》は、総合テーマ「マルチプルな未来」を独自に読み解き、オフサイト展示として挑む自身初の屋外大型作品。

《White Discharge(公園)》

《Holes and Buildings(容器)》は、色とりどりのプラスチック容器にそれぞれちがう映像が投影されている。穴から液体が流れ出ていたり、人の手がのぞいたりと、ずっと見ていても飽きない作品。

《Holes and Buildings(容器)》

それぞれの容器にはユニークな映像が投影されている

また、会期中はガイドツアーや全16会場を巡るスタンプラリーも開催。集めると素敵な記念品がもらえるそうなので、ぜひ各会場を巡って1年に一度のそれを読むを楽しんでいただきたい。来年は記念すべき第10回目となる恵比寿映像祭。ますます未来に向かって発展する作品とそれを読むに期待したい。

写真は東京都写真美術館のスタンプ

石田織座(MonitoriPlovdiv編集部)

第9回 恵比寿映像祭
会期:2017年2月10日(土)~2月26日(日)
会場:東京都写真美術館、日仏会館、ザ・ガーデンルーム、恵比寿ガーデンプレイス センター広場、地域連携各所 ほか
https://xn--e1agzba9f.com

читать дальше led-usb.info

http://pillsbank.net