ミッションは“すべての人をアートの当事者に”―日本の美を世界に繋ぐ新たなプラットフォーム「B-OWND」始動(1)

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ミッションは“すべての人をアートの当事者に”―日本の美を世界に繋ぐ新たなプラットフォーム「B-OWND」始動(1)
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2019/6/21 15:45

ミケランジェロやダ・ヴィンチを応援し、作品を最初に購入した人は、批評家や富豪ではなく、じつは近所の誰かだったかもしれない……そういった記録は残念ながら残っていないが、今後あたらしい美術史をつくる可能性を秘めた「アートと工芸のプラットフォーム」が生まれた。

5月10日にサービスを開始した、日本のアート・工芸作品の新たなプラットフォーム「B-OWND(ビーオウンド)」。これは空間づくりのプロフェッショナル、丹青社が新たに手がけるプロジェクトで、「すべての人をアートの当事者に」をミッションに、ブロックチェーンを活用した仕組みで日本のアートマーケットの拡大とアーティストのバックアップを目指している。リアルでの空間づくりに長く携わってきた同社が、今なぜ仮想空間でのサービスを立ち上げるに至ったのか?「B-OWND」プロジェクトの責任者である文化空間事業部 事業開発統括部長の吉田清一郎さんと、同統括部に所属するB-OWNDプロデューサーの石上賢さんにお話をうかがった。

アーティスト・工芸家の未来を支援する「B-OWND」

どんなサービスなのか、なぜリアルの空間づくりを手がけてきた丹青社がWeb上でアートマーケットを立ち上げるのか。そして、そこにはどんな思いが込められているのだろうか?まずは「B-OWND」自体の解説を詳しく行っておこう。

B-OWNDロゴ

石上賢さん(以下、石上):B-OWNDのミッションは「すべての人をアートの当事者に」です。簡単に言うと、日本のアーティストや工芸家、世界中のコレクター、キュレーターや評論家を繋ぎ、ブロックチェーンの技術により、アート作品の価値を保ちつつ直接売買を可能にしたサービスです。ブロックチェーンを用いると、作品の売買に不可欠な真贋の鑑定や所有者の流通管理などを信頼性の高い形で確実に行えるんです。

石上賢さん

石上賢さん(株式会社丹青社 文化空間事業部 B-OWNDプロデューサー)

B-OWNDの主要な機能としては、以下の3つ。

(1)アーティスト・コレクター・レビュアーをつなぐPR&キュレーションメディア機能
(2)Eコマースによるアートマーケット機能
(3)ブロックチェーンを活⽤した作品の真贋および流通管理機能

このサービスの肝であり、画期的といえるのは(3)の「ブロックチェーンを活用した作品の真贋および流通管理機能」だ。石上さんは、学生時代からアーティストの創作を応援するプロモーション活動をおこなってきた行動派。日本国内のアートに対する知見の少なさや、アートそのものに対する敷居の高さ、アーティストの経済基盤の不安定さなどを実感してきたという。アートの価値を新たに提示し、業界の活性化とともに誰もが気軽に美に触れ、語り、伝えられる場をいつかつくりたいと考えてきただけに、同サービスにかける想いは熱い。

B-OWND トップ画面

B-OWND トップ画面

リアルな空間をつくる丹青社が、なぜWeb上でアートマーケットをつくることになったのか?その理由を、文化空間事業部 事業開発統括部長の吉田さんはこう語る。

吉田清一郎さん(以下、吉田):私たちが所属する文化空間事業部は、これまで博物館や美術館などの空間づくりを通じ、アートや工芸をテーマとして取り扱い、これらの作品をつくるアーティストや工芸家のみなさんと多く関わってきました。そのなかで、日本の文化の担い手たちが厳しい創作環境におかれている状況も長年見てきています。グループ会社には日本唯一の文化空間の専門シンクタンクである丹青研究所もありますし、空間を通じて日本の文化を伝えてきた私たちが、こうした状況をそのままにしておいていいのか…?という課題意識がずっとあったんです。

吉田清一郎さん(株式会社丹青社 文化空間事業部 事業開発統括部長)

吉田清一郎さん(株式会社丹青社 文化空間事業部 事業開発統括部長)

事実、伝統的工芸品産業に携わる人の数は、1979年の28.8万人から2015年には6.5万人へ減少しているという(一般財団法人 伝統的工芸品産業振興協会調べ)。

また、日本のアートマーケットの規模は、世界6.7兆円のうち約3.6%。約2,400億円でしかない(出典:文化庁「アート市場の活性化に向けて」)。GDPや富裕層の割合からすれば本来1兆円以上の規模があると考えられるにも関わらず、そのポテンシャルを生かし切れていない。そんな日本のアートマーケットの拡大に寄与したい。さらに、アーティストや工芸家の活動をバックアップする仕組みによって文化芸術が花開く社会を実現したい。そんな気持ちが「B-OWND」立ち上げへと繋がったのである。

現時点での参加アーティストには、漆芸家の若宮隆志さんやガラスアーティストのノグチミエコさん、陶芸家の市川徹さん、建築家・陶芸家の奈良祐希さんなど、伝統工芸界で活躍する大御所から若手までが並ぶ。参加アーティストは今後も随時追加される予定だ。

アート×ブロックチェーン、その親和性

石上:世界のアートマーケットのうち大半を占めるのは二次流通市場です。例えば、1948年に150万円で取引された作品が2015年には226億円になっているジャクソン・ポロックをはじめ、アート作品は二次流通やさまざまな要因が作品に紐づく来歴情報によって価値が上がることがあります。二次流通の際に力を発揮するのが作品証明書なのですが、長年紙の証明書を使ってきました。紙はすぐコピーが可能なので証明書自体の真贋が怪しいこともあり、偽物が売買される原因にもなっていました。その紙の証明書の代わりになるのがブロックチェーンによるデジタルの作品証明書です。

「ブロックチェーン」と聞くと、金融関係の話でしょ…?と思う方も多いかもしれないが、ブロックチェーンとは平たく言えばインターネットにある台帳技術のこと。アート業界にも革命を起こすかもしれないと言われている。

1.管理者がいない平等性(ユーザーの要望で動く)
2.起きた事実の取り消しができない不可逆性(事象が残る=信頼)
3.改ざんが極めて難しい信頼性(複数でのデータ共有も可能に)

という特性により、スマートコントラクト(契約のスムーズな検証、執行、実行、交渉)が可能になる。本サービスでは、アート×ブロックチェーンを最前線で進めるスタートバーン株式会社の「アート・ブロックチェーン・ネットワーク」プロジェクトに参画し、共同でシステムの開発をおこなったという。

吉田:ブロックチェーンは作品の真贋や来歴情報が価値につながるアートマーケットと親和性が高いといえます。紙の作品証明書と異なり、作品の流通経路が可視化されますし、改ざんが極めて難しい仕組みになっているからです。

さらに将来的には、二次流通の際にアーティストに還元金を送ることも可能になる。これまで日本では難しいとされてきた追求権の行使がブロックチェーンにより可能になり、アーティストの経済基盤を安定させることにもつなげられる。

新たな美術史が生まれる可能性とロマン

石上:B-OWNDは、日本のアートマーケットを世界に繋げるまったく新しいチャネルです。こうしたブロックチェーンによるデジタル作品証明書が、新たな美術史をつくる可能性もあると考えています。過去、アート作品の売買履歴に名前が出るのは歴史的な著名人ばかりでしたが、この仕組みなら、それが市井の人であっても作品の購入者、評価者として明確に名を残すことになる。そうした一本の線によって作品の来歴、そしてアーティストの成長の様子を追うことができるって、すごくロマンがありませんか?個々人の美意識の集合体から新たな美術史ができる。そんな転換点がここからつくれたらと思っています。

ちなみに、B-OWNDとは、日本の“美(bi)”、乗り越えるの“ビヨンド(beyond)”、繋がるの“ボンド(bond)”を掛け合わせた造語です。日本の精神性を表す『美』をブロックチェーンで世界の人たちと繋げることと、既存のものではない美術史を創造することという意味が込められています。

田辺竹雲斎 作品

B-OWND 参加アーティスト・田辺竹雲斎さんの作品

壁画や彫刻と教会、襖や掛軸と書院造など、アートは空間と一体で制作されてきた。B-OWNDというサービスを契機に、丹青社の事業「空間づくり」においてもアーティストとのコラボレーションによって新たな空間価値を創造していきたいと意気込む。次のページでは、サービスのローンチに先駆けて開催されたトークショーについて触れていく。

次ページ:アートと工芸の境目、アーティストの空間づくりの関わり方を探る