サウンドアーティスト・evalaによる、「音を視る」聴覚体験の発信拠点が渋谷に誕生

サウンドアーティスト・evalaによる、「音を視る」聴覚体験の発信拠点が渋谷に誕生
この春にオープンした、イノベーターのハブとなる複合施設「EDGEof(エッジオブ)」が創発を促すための大規模な施設として注目が集めている。そして、ここから新たにスタートするプロジェクトが、サウンドアーティスト・evalaさんが音の新たな可能性を探っていくサウンドラボだ。彼が力を注いできた「See by Your Ears」の発信拠点の誕生を記念する、キックオフパーティ「Hearing EDGE vol.0」をレポートする。

新たな共創の場に誕生した、「耳で視る」聴覚体験の発信拠点

渋谷タワーレコードの向かいにあるビル一棟をまるごと改装した複合施設「EDGEof」は、さまざなまエキスパートが集まり、コミュニティを形成する場としてスタートした。コミュニティラウンジ、それを読むスペース、メディアセンター、キッチン、茶室などが設置され、世界中のスタートアップや起業家、投資家、クリエイターにエンジニア、メディアから研究者、各国政府機関などが招かれる。一般的なシェアオフィスのように場を貸し出すインキュベーション施設とは違い、コミュニティ育成を目標としているのが新しいといえるだろう。

EDGEofが注目を集めているのは枠組みの新しさだけでなく、各分野で活躍してきたファウンダー6名(Daniel Goldmanさん、Todd Porterさん、ケン・マスイさん、小田嶋 Alex 太輔さん、水口哲也さん、孫泰蔵さん)によって立ち上げられたことが大きい。それによって“ゲームチェンジャースタジオ”と称されるほどだ。

本稿の主題となる、「See by Your Ears」についてもかんたんに説明しておこう。「See by Your Ears」は、evalaさんが2016年より取り組む「耳で視る」という新たな聴覚体験を創出するプロジェクトで、これまで数多くのインスタレーション作品を発表し、聴覚から刺激を与えてイマジネーションを想起させることに試みている。

evalaさんは電子音楽を軸に、立体音響システムや先端テクノロジーを用いた多彩なサウンドデザインや楽曲提供を行い、国内外の音楽祭や美術展に携わっている。直近ではスペインで行われた音楽とクリエイティブ、テクノロジーを中心にしたフェス「Sónar+D」で作品を出展。その国際的な活躍によって、作品の規模も含め成長をし続けている。

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「サウンドアーティスト」という言葉に耳慣れない方もいるかも知れない。おもには“音”をテーマに美術館で展示されるようなアート作品を手がけるアーティストのことだ。だが、evalaさんは従来のサウンドアートが、さまざまな”音の出る”機器を視覚的に展示するもの(evalaさん曰く「目で聞くもの」)ばかりで、本来の意味で音からしか生み出しえないものは少ないのではないかと語る。このサウンドラボでは、そこからさらにサウンドアートの領域を拡張すべく、音とアートと建築の融合をテーマとした、従来の音楽スタジオとはまったく異なる、音の新たな可能性を探っていく。

EDGEofの6階、「EDGEof Creator’s Studio」にオープンしたばかりの『SOUND LAB』はevalaさんの制作活動や、さまざまなコラボレーターとの実験と制作に特化したスタジオだ(一般入場は受け付けていない)。上下左右前後にスピーカーが設置された、余計なものが一切ないシンプルな内装。音漏れのしない密閉された空間で、彼の手がけたサウンドアート作品が再生されると、立体音響ならではのその場に音が存在するかのような体験ができた。聴覚からの刺激だけで思わず身震いしてしまう、このサウンドアートに特化したスタジオの施工に携わった、日本音響エンジニアリング佐竹康さんからスタジオのコンセプトをうかがった。

「既存のスタジオは、一般的なフォーマットであるステレオ(2ch)やサラウンド(5.1ch)などを基準にして施工します。今回はサウンドアート用のスタジオなので、作品によってスピーカーの数も変わります。その可能性があるので、部屋の存在はできる限りニュートラルな空間を作りたいと思いました。また、音楽は時間芸術なので時々刻々と変化して、音の位置がずれていきます。そういったずれた音を少しこぼしていくテトラポットのような音響機構『柱状拡散体』をスタジオの壁に埋め込んで、偏った音場を減らすように心がけました」

音はどんな体験と未来を生み出すのか?

キックオフそれを読む「Hearing EDGE vol.0」は、Edgeofの2階にあるそれを読むスペース「EDGEof Crossing」で6月30日に開催された。渋谷の街のざわめきが感じられるような大きな窓のある会場内は予約で満席。evalaさん本人と「See by Yours Ears」のディレクターを務める塚田有那さんをモデレーターに、ゲストを加えた2部構成のトークセッションとDJパーティが行われた。

まずは「⾳から世界をデザインする」というテーマから、現在フリーランスのキュレーターとして活動する阿部一直さん、「⾳響回廊 オデッセイ」を製作/プロデュースしたソニー株式会社の戸村朝子さんの2名をゲストに迎えたトークがはじまった。

今年、「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト) 2018」における、ソニーのサテライト会場で発表した「音響回廊“Odyssey(オデッセイ)”」を中心に話題は進む。evalaさんはソニーが開発した空間音響技術「Sonic Surf VR」と576個のスピーカーを用いて、まるで“時空を旅するような”音響空間を構築。またスピーカーと同数の576本の細い線に精密にプロジェクションした光のインスタレーションをアートユニットKimchi and Chipsが手がけた。以下の動画は参考の一部にしかならない。実際に足を運んで聴いて体験する作品だ。

「Odysseyは三次元的な作曲をしているので、立つ場所によって聞こえ方が違う。そういった音の作品は言葉で伝えにくいんですよね」(戸村)「たしかにサウンドインスタレーションはヘッドフォンで縮約できない。体験しないと見えてこない」(阿部)「空間を変容させる音楽をつくるには、僕が“空間の作曲”と呼ぶ新しい作曲方法が必要になってくるんです」(evala)といった、視覚芸術とは違った音響芸術の魅力に関してのディスカッションとなった

続いて、「音から生まれる都市と生命」というテーマで、evalaさんとアート活動も⾏う人工生命研究者の池上高志さん、コンピューテーショナルデザインを取り⼊れた建築家の豊田啓介さんの2名を交えて、異業種とのディスカッションが行われた。「音は、理論やコンピューター上でシミュレーションするのだけではなく、実際に環境の中で鳴って立ち上がることが重要」(池上)「自分の体をさらけ出すのが重要。都市と身体は直接つながっている」(豊田)など、短い時間ながらディスカッションは加熱し、音を出発点にした異なる立場から飛躍のある見解が飛び交った。

音の捉え方の意識が変わるトークそれを読むの後は、DJタイム。evalaさんとのコラボレーション歴も長いライゾマティクスリサーチの真鍋大度さん、複雑系科学をベースに研究や音楽作品を発表するItsuki Doiさん、そしてevalaさんがDJブースに立ち、参加者と登壇者のハブが生まれるようなパーティとなった。

音を通した体験を意識した美術作品を手がけるのはevalaさんだけでない。現在、音楽と構造物をテーマにした企画展「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」が六本木の21_21 DESIGN SIGHTで会期中だ。今後、聴覚を起点にした作品が注目され、増えていくことを予見させる一夜であった。

取材・文:高岡謙太郎 撮影:Tatsuya Yokota

See by Your Ears

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