“未来ののれん”制作に向けて知恵を絞る!「nihonbashi β」アイデアワークショップレポート(2)

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“未来ののれん”制作に向けて知恵を絞る!「nihonbashi β」アイデアワークショップレポート(2)

第三回:のれんのコンセプト設定

2018年9月8日 @Clipニホンバシ

ワークショップ3日目は、最後に制作するのれんの大枠となるアイデアを発表する。まずは、ウェブデザイナー/インターフェースデザイナー/映像ディレクターの中村勇吾さんの講義から。のれんをつくるにあたって、視覚表現に見識のある中村さんならではの質感についての知識が共有された。

中村勇吾さん(tha ltd.)

中村勇吾さん(tha ltd.)

「直接目に見えない対象に内在している質を、目に見える現象を通じて察知している。アニメーションを含めた動画作品では動きを通じてそこに魂があることを察知する。具象的な手がかりがなくても、動きだけで『そこに霊(アニマ)が宿る』ことを察知できる。魂の質感を観ることによって、観るものとの距離感が少し縮まると思う」と語る、中村さんの講義は参加者にとって大いに刺激となり、のれんの質感をどう扱うかという思考を拡張させる内容となった。

地域とクリエイターが一緒にものづくりをしていく時に大切にすべきことはなにか?中村さんにコメントをいただいた。

「自分だったら、まず頭を切り替える。自分がつくるというより、地域の人たちとつくったようにすることかなと。あと、生活の中でずっと目に触れるものは、すごくユニークだったりする必要はないと思います。“嫌じゃない”ということが重要で、足し算するよりは嫌なことを消していく。例えば、インタラクティブな作品でも電源やコードが見えていると嫌じゃないですか(笑)。そういう要素を消して、おさまりをきちんとしていくんです」

内と外を抱擁する柔らかさ

続いて、のれんの企画・デザイン・制作に携わる、有限会社中むらの中村新さんが登壇。のれんを専門にデザインするデザイナーは国内で中むらだけ。過去に手がけたプロジェクトでは、「コレド室町」をはじめ、「アクアイグニス 片岡温泉」「鬼怒川温泉駅のリニューアル」「日本橋大暖簾プロジェクト」など、現代の建築物にマッチさせた、日本の伝統的なデザインセンスを含んだのれんを数多く手がけている。のれんの歴史的な背景や文化的な背景に対して、プロならではの意見がうかがえた。

中村新さん(中むら)

中村新さん(中むら)

「のれんはそもそも庶民の生活の中で自然に発生してきた文化。茶道などのようにしきたりがない、とても緩い存在です。のれんの定義はふたつあって、“店名の乗った屋外広告物”として。もうひとつは透けることで人の気配がわかったり、そこにあることで“壁ではない内と外を分けるもの”。この“内と外”というのは重要なキーワードで、双対性と呼ばれます。要素をミックスさせつつ独自文化を生んできました。例えば、中国で生まれた漢字と日本で生まれた平仮名が共存していく。そういった日本ならではの文化がのれん的なのです。また、のれんは海外の方からは、のれんの名前はわからなくても日本独自の文化として認識されています」

そして、中村さんにはのれんの制作についてもコメントをいただいた。

「現在ののれんの制作のプロセスの多くは、オンラインのプリントサービスで発注することがほとんどのようです。ただ、そういった制作でのコミュニケーションで改善する点はまだまだあるので、私たちは実際にお会いした上で提案したいと思っています。それもあって、生地の素材は極力、生で見てもらうようにしています。制作期間は、ケースバイケースですが、一枚のものではサンプルを含めて3週間〜1か月半くらいです。ただ、刺繍を入れたり海外展示会向けの特殊なものになると、オリエンから2〜3か月ですね。なので、今回の未来ののれんの制作期間は短いので冷や汗モノですね(笑)」

今後、中村新さんは東京を代表するブランドとしてその価値と魅力を発信するための「江戸東京きらりプロジェクト」に参加し、2020年に向けてのれんの普及に一層力を入れていくという。

日本橋らしい未来ののれんに向けて

ワークショップ最終日となるこの日のプレゼンは、今後制作していく未来ののれんの原案を発表する。3回にわたって得られた知識と形成されたチームワークが発揮される瞬間だ。各チームが担当する店舗の資料を読み込み、まずは紐付く単語をポストイットへと大量に書き出していった。そこから「千羽鶴の日本橋もみじ」「自然・歴史の変化と一体となれるのれん」などが提案された。

中村勇吾さん、中村新さん、朴正義さんによって講評が行われ、若手クリエイターたちの試案は、前回までのような発想の飛躍だけでなく、いかに現実に落とし込むか、アイデアの肝はなにか、のれんとしてのデザイン性はどこにあるのか、などのポイントに的確な指摘がされた。アイデアの枠を抜けきらない部分が露見され、また現実での運用という意味では困難な案が多く、アイデアの検討が必要な状況となった。

次回からはのれん制作チェックが3回にわたって行われる。プレゼンテーションしたのれんを展示できるようにブラッシュアップしていく。若手クリエイターの豊かな発想がどこまで現実に寄り添っていくのか、今後の展開が気になるところである。

取材・文:高岡謙太郎 撮影:川谷光平(第一回・第三回)細倉真弓(第二回)