「アート×伝統産業×先端技術」、工芸の地力を再発見する「工芸ハッカソン」から新たに生まれた可能性-(2)

「アート×伝統産業×先端技術」、工芸の地力を再発見する「工芸ハッカソン」から新たに生まれた可能性-(2)

アイデアはどのようにカタチになったのか?いよいよ成果発表へ

今回の「工芸ハッカソン」は、市内で伝統産業に従事する工芸作家や職人以外は、東京近郊に在住の参加者が多かった。また全員本業がありながらの自主的な参加だ。各々がなにかしらの思いや熱意を持っているが、時間はもちろん距離という物理的な制約、そして前提としている“言語”の違いを、2か月足らずで可能な限り埋めていくことが求められた。「slack」などのメッセージアプリを使って、打ち合わせや情報共有を重ね、高岡にも足を運びながらの制作期間となった。

DAY3となる11月18日にハッカソン参加者37名が高岡に再集結。7チームそれぞれが制作やプレゼン準備に取り組んだ。事前に地元参加の職人たちが鋳造したり漆塗りをしたアウトプットができているチーム、プログラムを実装するチーム、その場で紙で洋服をつくるチームなど、高揚感や熱気が入り混じったまま一日が慌ただしく過ぎていった。

公開プレゼン&審査会の会場は、2017年に完成したばかりの株式会社能作の新社屋で行なわれた。各チームのプレゼンは10分程度、7チームすべての審査後、審査員によって協議された。

審査員は以下の6名(敬称略)
石橋素(エンジニア/アーティスト ライゾマティクス取締役)/林千晶(ロフトワーク共同創業者、代表取締役)/菱川勢一(映像作家/写真家/演出家 武蔵野美術大学教授)/高川昭良(高岡市デザイン・工芸センター所長)/髙橋正樹(高岡市長)/武山良三(富山大学芸術文化学部 学部長)

ここからは最優秀賞を獲得したチームをはじめ、いくつかのプレゼンテーションを抜粋して紹介する。

伝統技術の継承

特別賞を受賞した「伝統技術の継承」。スマートフォンで熟練の職人と見習いの職人の作業の様子を撮影して比較し、熟練の職人の優れた点(言語化されていなかった効率的な動き)から、見習いの職人の改善点を解析することができるというもの。また、そうした熟練の技を動画でアーカイブしていくことで、いわば“技のデータベース”を構築することも目的としている。見習いの職人がそこにアクセスすることで技の習得時間の短縮につなげることができるだけでなく、熟練の職人がいなくなってしまったとしても、その技術を残していける可能性にもつながっていく。伝統産業の未来を考えるなら、(高岡に限らず)後継者不足に悩む産地は速やかに進めていくべきことのように感じた。

9+1

最優秀を受賞した「9+1」のキーワードは「CRAFTECH」。現代の生活においては工芸品よりも電化製品のほうが多い、それならば工芸品に新しいエレクトロニクス的な要素を掛け合わせることで、形も機能的で美しく、そしてストーリーのある新しいものがつくれるのではないか……?という発想からスタートした同チームは、新しい素材としての工芸の可能性を見出し、解決策ではなくムーブメントの提案をしている。

アイデアソン〜ハッカソンにおいて、なんとなく1チーム1アイデア(1アウトプット)が暗黙の了解となっているが、あえて1アイデアに集約させず、漆を柔らかなイメージで見せるインスタレーション、人の気配を察知するプロダクト、センサーが埋め込まれた服、という3つのアウトプットを発表した。

Re工芸

「Re工芸」が取り組んだのは、“高岡工芸の再構成”。高岡の伝統工芸のイメージを人工知能が学習機能に基づき再構成し、さらにその提示をもとに職人が手作業で作品を仕上げていくというプロジェクト。

今回は高岡工芸が詰まった複雑なオブジェクトである仏壇と人工知能が出会うことで、人間(職人)ではありえない一手が提示され、取り組む側にもいままでにない能動性や気づきが生まれた。プレゼンテーションでは、この出会いを「予期せぬ答えを返してくれる隣人としての人口知能」という言葉で伝えていたのが印象的。ここでおもしろかったのは、最終的には“職人の違和感”を大事にしたという点だ。職人が美しさを感じなかった部分に、わずかな補修を加えてひとつの作品としている。

Metal Resarch Lab

手仕事にコンピュータ技術を介在・拡張させることで、いままでにない金属表現を出そうとする試み「Metal Research Lab」。金属の着色技法の工程にアルゴリズムで生成されたパターンを介在させたり、鋳造工程にアルゴリズムで生成させたジオメトリを介在させたり……コンピュテーショナルなコントロールによる新しいパターンや発色はパッと見たときにひきつけられるおもしろさがあった。審査員の石橋さんは同プロジェクトを「人がなにを美しいと感じるかのトライアル」と評した。

最後に審査員の総評で印象的だった言葉をいくつか。

「伝統と最新のテクノロジーを結びつけることはいろんなところで行なわれている。どれだけ効率が良くなっても人間はしあわせだと思うわけではない。だからこそ、最終的にすべて“人”に寄ったカタチの結果となった。参加者のDNAは残っていくと思う」(林)

「工芸には2秒では分からない、じわじわくる魅力がある。『9+1』では、道具として使われてきた漆が照明として使われていた。工芸の魅力を伝えていくには、機能を飛び越えていくアイデアが求められる」(菱川)

「地元の職人とテクノロジーサイドが対等な関係にあり、著名な人を呼んで何かを行うよりもはるかに意義があった」(武山)

出自の違うメンバーが集まり、短期間で集中してアイデアをカタチにしたからこそ、可能性の兆しのようなものは生まれたように思う。ここからなにか事業に……と考えるとそれなりにまた高いハードルはあるだろう。なにか新しいモノやサービスが生まれるのはもちろん期待したいことだが、それよりも異文化が混ざり合うことによって、人から人へなにかが伝播することにむしろ期待したい。

工芸ハッカソン

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