丹青社が考える強いチームづくりと新たなプロジェクトのかたち−「肥前さが幕末維新博覧会 幕末維新記念館」プロジェクト(2)

[PR]
丹青社が考える強いチームづくりと新たなプロジェクトのかたち−「肥前さが幕末維新博覧会 幕末維新記念館」プロジェクト(2)
いかにして「心震わせる」空間をつくるか

東中川:映像が中心となる空間と空間の合間にブリッジとして必ず、暗くて狭い通路やグラフィックで構成された静的な空間を置いています。空間の印象やボリュームにメリハリをつけた演出で、来場者の気持ちを途切れさせないようにしました。

元は体育館。既存施設をパビリオンに仕立てるため、空間構成やストーリーづくりをデザイナー2人で、またゾーニングやレイアウトは阪田さんがおもに担当した。

阪田まゆ子さん(以下、阪田):通常、デザイナーが2人いる場合は役割を分けて担当しますが、吉田とは一緒に進めるほうがうまく行きますね。思い描く物が似ているんでしょうね。

株式会社丹青社 デザイナー 阪田まゆ子

株式会社丹青社 デザイナー 阪田まゆ子
2005年丹青社入社。博覧会やミュージアム・それを読むなど、企業のプロモーション活動に関わる空間のデザイン・ディレクションを多く手がける。

吉田真司さん(以下、吉田):違う所は違うと言えて、いい所はさらによくできる。彼女はビジュアルやデザインセンスが素晴らしいですし、お互いでお互いを補完できるのがいいですね。

鈴木さんいわく「感覚と理論のバランスの勝利」。ゴールに対して異なるアプローチをすることで説得力が強まり、お客さまにも納得してもらいやすかったと語る。まるで最初から決まっていたアイデアかのように見えるが、冒頭にもあるように、いまの形になるまでには相当の苦労があった。

株式会社丹青社 デザイナー 吉田真司

株式会社丹青社 デザイナー 吉田真司
2005年丹青社入社。企業ミュージアムから博覧会、それを読む施設、アミューズメント施設まで幅広い分野でのディレクションとデザインを手がける。社内外のソフト資源を横断的かつ効果的に結びつけ、企画・デザインを行うことで、これまでになかった新たな施設づくり、体験価値の創造へと導く。

東中川:第三場と呼んでいるラウンド型のシアターは、当初は展示のみで観覧してもらう形でしたが、お客さまからは「ここで泣かせなきゃ」と。確かに、エンディングとなる第四場でメッセージを書いてもらうには見る人の感情も高ぶらせなくてはなりません。その課題もあったので、ものすごく考えましたね。また、最後までストーリーの精査に取り組んだのが第一場の大型映像です。「鍋島直正公の想いを本当にわかっている?」と問われる日々で。直正公の資料を読み込み、収録前日までお客さまとやり取りして台本を完成させました。

大型スクリーンで幕末維新の偉人のドラマを見せる第一場

大型スクリーンで幕末維新期の偉人のドラマを見せる第一場

佐賀の技術力を映像と役者のからくりライブショーで見せる第二場

佐賀の技術力を映像と役者のからくりライブショーで見せる第二場

七賢人の対話をラウンド型のシアターで見せる第三場

七賢人の対話をラウンド型のシアターで見せる第三場

楠の葉を模した紙にメッセージを書く「ことのは結び」の第四場

楠の葉を模した紙にメッセージを書く「ことのは結び」の第四場

鈴木:こうした基本を押さえてくれる彼女がいたからこそ、お客さまに他のメンバーの提案や意見も聞いてもらえたのだと思います。また、今回感心したのは、彼女を始め、特に指示をしなくても全員がやるべき仕事をその都度認識して進行してくれたことです。ここまで自発的なプロジェクトは初めてで、私も驚きました。

そして完成したのが、テクノロジーにも学術にも偏らず、展示、映像、ライブショーなど、さまざまな手法を融合しコンテンツを展開するパビリオンだ。デザインや技術も含め丹青社らしいバランス感があり、歴史好きもそうでない人も楽しめる。

小林:技術面では、ミラノ万博やモーターショーでも実績がある当社オリジナルのショーコントローラーを使いました。第一場から第四場までのすべての演出機材を一日中稼働させるのですが、このショーコントローラーだと映像だけでなく音響や特殊効果、照明などの演出機材もコンマ秒単位で一括制御できるんです。

阪田:その細かさはすごいですよね。0.2秒と0.8秒では演出の印象がまったく変わってしまうので、デザイナーとしてはありがたかったです。映像を中心に照明や特殊効果のタイミングが気持ちよく合って、空間全体での演出の完成度が格段に上がっていきました。

小林:もう10年以上アップデートを繰り返してきているので信頼性も上がっています。運営中の現在は1~2人で対応できるし、細かい調整もすぐその場でできるのが強みです。工場用制御システムを使った専用システムなので安定感もありますよ。

吉田:そういう技術面も含め、トータルで体験を提供できるのが丹青社の強みですよね。単品料理ではなく極上のフルコースというか、最高の形で全編を味わっていただけるように取り組み、一品ずつのおもてなしにも全員が総力を上げて挑む。そういう努力ができるのが当社のチームのよさかなと思います。

川南保夫さん:ひさしぶりに博覧会に関わりましたが、ライブショーの仕掛けは初めてでした。こんな演出技術もあるのかと私自身も驚きましたね。事業部の区割りではできない、多様な部門の経験を持ち寄ったチームだからこそ実現できたプロジェクトだと思います。すごくいい勉強になりました。

株式会社丹青社 プロダクションディレクター 川南 保夫

株式会社丹青社 プロダクションディレクター 川南 保夫
1991年制作職として丹青社入社。科学系の博物館に加え、近年では子ども関連施設、商業デザイン系の施設も手がける。

スペシャリストが活躍できる環境とプロデューサー育成

社内のリソースを束ねるプロデューサーが、最適なメンバーを編成しプロジェクトを進める。今回のような形は今後も増えていくに違いない。新たな仕事とチームづくりについてどう考えているだろうか。

鈴木:百貨店の催事装飾からはじまり、さまざまな施設の内装を手がけてきた当社ですが、近年では内装やグラフィック、映像、照明の垣根がなくなりつつあります。壁の意匠だけを考えるようなビジネスは、できることに限界がでてくるでしょう。壁面の職人も映像や照明の知識が必要ですし、映像作家はどんな場で投影されてどう使われるかを理解して、制作する。そうでなければいくら技術があっても見る人の心を動かすことはできません。各々が各分野のスペシャリストとしてプロジェクトに携わるチーム全員の仕事を理解し、どのように力を活かして繋げるかを意識しなくては。そう考えると、スペシャリストが多く、お互いがお互いの仕事を理解し合えることは、当社の強みだと思っています。今後は、こうした人材をまとめるプロデューサーもさらに必要になるでしょうから、率先して育成に取り組みたいです。

プロジェクトの“中の人”に聞く

<佐賀県 肥前さが幕末維新博事務局 次長 田中裕之さん>

佐賀県 肥前さが幕末維新博事務局 次長 田中裕之さん

佐賀県 肥前さが幕末維新博事務局 次長 田中裕之さん

名君鍋島直正公をはじめとする佐賀の偉人の功績や技術をいま一度見直し、その「志」を未来へ伝えたいというテーマがあった「肥前さが幕末維新博覧会」。博覧会全体を統括する田中裕之次長は、プロジェクト立ち上げ当初を次のように振り返る。

「初期の企画内容には足りない部分もありましたが、想いをまとめて伝えながら意見交換を進めました。意図をよく汲んでくださり、結果的には映像的にも仕掛け的にも、初期案よりはるかに優れたものになったと思います」

行政と民間の橋渡し役としてかなり頻繁にやり取りをしたと語る。その中で資料とパネルを見て終わりの展覧会にはしたくないと、唯一無二の空間を望んだ。

「最終の映像の音入れまで立ち会いましたから、かなり面倒な存在だったと思います(苦笑)。でもそんな関係を許してくれる度量を丹青社さんはお持ちでしたので、ありがたかったですね」

佐賀県の文化課長や観光戦略推進監として民間とのプロジェクトも多数進めてきた田中次長。しかしチームとしてここまで密に動けたのは初めてだったという。その決め手となったのは「信頼関係」だ。

「行政と制作サイドが『いいモノをつくろう』と信頼しあえたことで、最後まで一丸になれました。丹青社さんには月に何度も佐賀に来ていただきましたし、顔を付き合わせて話し合うことからも、より強い関係を築くことができました。今回の経験は佐賀にとって大きな躍進の機会になりますし、若い世代の成功体験として強い自信となると思います」

また、第四場のメッセージをしたためる「ことのは結び」のコーナーでは、8~9割が前向きなメッセージで溢れているという。

「ここまで狙っていた効果が出るとは思わなかったので驚きました。実際に映像を見た人と見てない人では興奮の度合いも違いますし、県外の方にも感動を与えられているのがわかります。教科書に載っていない史実に浸ってもらえる、すばらしい場になったと思います」

県民の皆さんには佐賀のアイデンティティに気づいてもらい、県外の方にも佐賀の素晴らしさを知ってもらえて嬉しいと田中次長は語る。丹青社のクリエイティブは幕末維新期における佐賀の功績をしっかりと伝え、まさに来場者の「心震わせる」空間となったようだ。

聞き手:瀬尾陽(MonitoriPlovdiv) 取材・文:木村早苗 撮影:石原哲人

丹青社

肥前さが幕末維新博覧会