Vectorworks ベクターワークス活用事例

事業主や設計者の思いをかたちにして空間に組み込む-丹青社の施工を支えるVectorworks(2)

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事業主や設計者の思いをかたちにして空間に組み込む-丹青社の施工を支えるVectorworks(2)
株式会社丹青社(加藤圭

プロジェクトの芯となるのは、何があってもブレないストーリー

このように、子どもの研究から発想を広げていった『HUGHUG』のプロジェクト。しかしそれは、事業主からの要望をスケッチに起こし、見積もりを提示するという工程を経てきたからこそ。加藤さんは、「施工の現場をより円滑に推進していくために、それ以前の推進がとても大事」だと語る。

設計から最初に上がってきたのは、このイメージスケッチです。このときの僕の使命は「このスケッチだけを頼りに、想像力をはたらかせて予算と工程を計画に落としこむこと」でした。この少ない情報から、お客さまの思いと設計の意図をどれだけ読み取り、それをいかに具体化できるかが勝負です。見積書を作成する期間はたいてい半日、長くても1日ほどしかないので、いままでの経験で培ってきたノウハウと瞬発力を総動員させました(笑)。

『京王あそびの森 HUGHUG<ハグハグ>』イメージスケッチ図

『京王あそびの森 HUGHUG<ハグハグ>』イメージスケッチ図

この時点では、1階は森の雰囲気で、2階は雲の上をイメージしたゾーンという基本的なコンセプトしか決まっていませんでした。そこでまず考えたのは、この施設をめぐる「自分なりのストーリー」です。どの案件にも共通しますが、お客さまが業界でどういう立ち位置にいるのか、どういうことを目指しているのか、それに対して自分はどういうゴールを目指していくのか。といったところを足がかりに、どんどんイメージを膨らませていくんです。

イメージを膨らませた後は、社内・社外を含めて誰をアサインするかを考えます。現場監督として誰を常駐させるか、協力会社の誰と一緒にやればうまくいきそうか……。スタッフの個人名まで具体的に落とし込んでいくんです。

このときに大事なのは、ストーリーにはできるだけ多くの道筋やゴールを用意すること。最初にひとつのパターンでがっちり固めたとしても、途中で方向修正が必要になったり、当てにしていたスタッフがプロジェクトに入れなくなってしまうことも可能性としてありますから。そのたびに、別のストーリーに組み立て直していたら、どんどん最初のコンセプトからブレていってしまう。何があっても立ち止まらずに「じゃあ、このパターンで」とすぐに別案を提示できるようにしたいんですね。だから、事前準備は欠かせません。

スケッチにない部分まで想像し、思いをカタチに変えていく

自分としては、「描いてある通りの要素をそのままつくる」ではなく、「お客さまや設計がまだ思いついていないものも全部想像して組み込む」ことを目指したいし、そこを自分には期待されているのだと理解しています。『HUGHUG』でいえば、スケッチには湖や大きな岩が描かれていましたが、実際の見積もりには反映していません。「これは本当に存在させるわけではなく、世界観を表現するために描いたのだろう」という部分を汲み取り、湖や岩をどう表現して見せるかを想像して、提案に盛り込みました。

また、レストランの内装についてもスケッチには具体的に描かれていませんでしたが、「この面積だから定員数はこのぐらい」「テーブルとイス、什器はこのぐらい」とか、「急な曲がり角があって危険だから、処置が必要だなぁ」とかも考えます。注意喚起のサインも描かれていませんでしたが、見積もりにはサインの項目も立てましたね。お客さまの予算やプロジェクトにかける思い、運営方法などをイメージし、スケッチの情報を足したり引いたりしながらリアリティーを深めていくことが大切です。

先日オープンしたばかりの『ポケモンセンターヨコハマ』も同様で、設計からあがってきたイメージスケッチを頼りに予算やスケジュールなどを決めていきました。この店舗は、港街の横浜らしい海のテイストと、ポケモンらしさを融合したデザインです。

『ポケモンセンターヨコハマ』天井にある伝説のポケモン・カイオーガのオブジェが来店する子どもたちに大人気

『ポケモンセンターヨコハマ』天井にある伝説のポケモン・カイオーガのオブジェが来店する子どもたちに大人気

こちらのイメージスケッチもたとえば、店先の壁にモンスターボールのマークが描かれていますが、特に素材や仕様などは書いていない。でも、港町っぽい雰囲気なのでたぶん船によく使われている鋲みたいなテクスチャーがあるといいんだろうな、などと想像していくんです。

『ポケモンセンターヨコハマ』イメージスケッチ。壁にあるモンスターボールのマークは、港町ならではの雰囲気に描かれている

『ポケモンセンターヨコハマ』店頭イメージスケッチ。壁にあるモンスターボールのマークは、港町ならではの雰囲気がうかがえる

船の型や特徴などを勉強して、もっとこういう表現にしたら誰もが空間のコンセプトをすぐ理解できるのではないか?ということは、費用対効果をみながら積極的にお客さまや設計と共有していきます。

『ポケモンセンターヨコハマ』イメージスケッチ。「ここにはこういうライトが必要だろう」「少し透けている雰囲気だからこの素材を使おう」など、1枚のスケッチからたくさんのことを読み取るという

『ポケモンセンターヨコハマ』店内イメージスケッチ。「ここにはこういうライトが必要だろう」「少し透けている雰囲気だからこの素材を使おう」など、1枚のスケッチからたくさんのことを読み取るという

毎回、イメージスケッチだけで予算の計画をしていますが、その精度には自信があります。もちろん、パートナーとなる協力会社や体制、環境によっては金額も多少変わってきますが、これまでに重ねてきた経験で得たノウハウと情報が頭の中にインプットされているということが自信につながっていますね。あとはお客さまから預かる予算から外れないようなストーリーを組み立てているので、チーム全員でそのストーリーに乗ってゴールに向かうことができればOKだと思っています。

Vectorworksの分かりやすい図面は、現場品質に大きく貢献

具体的な仕様が決まった後は、設計担当者が平面図、展開図、什器図へと落とし込んでいく。これらの図面を引き取って、現場に渡すための施工図に起こしていくのも制作の役目だ。丹青社では、それらの図面をVectorworksでつくっている。

見積り、施工図、現場施工と現場管理は常に時間に追われています。そんな中でデザイナーからの図面をいち早く把握することは、そのまま現場品質に繋がります。そういった意味でVectorworksの図面は分かりやすく、直感的に頭の中に入ってくるため、現場品質に大きく貢献していると思います。特に展開図では画像や模様などで仕上げが再現されるため、仕上げと面積がそのまま頭の中に入ってくるし、空間イメージとコスト感が図面を見ながら結びついていきます。

『京王あそびの森 HUGHUG<ハグハグ>』1Fもりのひろば前 展開図

『京王あそびの森 HUGHUG<ハグハグ>』1Fもりのひろば前 展開図

複雑化するデザインを、Vectorworksで3D化して検討

デザイナーのイメージでは、「うねり」や「曲面」を多用したデザインの造作も多々あります。Vectorworksの図面は分かりやすいですが、こうした複雑なデザインは読み込むのに時間がかかるし、図面だけでは詳細の納まりや安全性の検討も難しくなるんです。

こうした複雑なデザインの造作は、3Dにしてデザイナーとデザインの共有をしたり、協力会社と納まりの検証を行ったり、場合によってはそのままお客さまに見てもらって確認します。ネット遊具の中央エレベーターも、3D化することで構造面や施工上の納まりを検討したり、子どもの遊具内の移動もイメージして現場に活かしました。

ネット遊具の3D図面

ネット遊具の3D図面

知識を積み重ね、目指すは全く新しい次元の空間表現

着工後に現場を管理するのも、加藤さんの仕事。とはいえ、一般的な現場管理の業務とは異なるようだ。

自分がやっていることは、いわゆる「現場管理」「作業着とヘルメット」のイメージとものすごくかけ離れていて…。現場にずっと詰めて管理するよりも、プロジェクトに関わるすべての人の思いを束ねて、それをお客さまとも協力会社ともきちんと共有することのほうがよっぽど大事だと考えています。

当社では、どの職種も、ひとつひとつ違うプロジェクトを進めていく上で、固定されたマニュアルはありません。制作も営業も設計も、「〇〇だけやっていればOK」という意識がない。だから制作も「現場監督だけやればいい」のではなく、どんな角度から空間づくりにアプローチしてもいいという自由な風土があります。

いろいろな領域の空間づくりジャンルに関わっているからこそ、必要とされる専門知識も多岐にわたる。それを常に学び続け、そのノウハウを活用して新たな空間づくりにチャレンジするのが加藤さんのこだわりだ。

制作の仕事は、いろんなジャンルの知識が増えるので面白いですよ。同時に、いかに自分が学生時代に勉強してこなかったかを思い知りますけれど(笑)。いまだに大学時代の物理の教科書を開いて勉強し直すこともありますね。そうやって積み重ねた知識を活かして、いろいろな空間に込められたお客さまや設計者の思いを表現していきたいと思っています。今、チャレンジしてみたいのは、まったく新しい解釈の空間づくりです。

デジタルの進歩により、これまで不便であった部分や、伝わりにくかった表現もわかりやすくなってきていると思います。ただ、その反面、ひとつひとつの価値を考えにくくなってしまっている気もします。僕は、ヒトやモノが発する温度をこれからも大切にしていきたい。加えて、デジタルとリアルが、しっかりとしたバランスで共存できるような空間づくりを提案していけたらと思います。

ヒトとヒト、ヒトとモノが直接触れ合うことで生まれる感動を体験できる場はリアルな空間でこそ発揮されると思うので、リアルな空間の価値を絶やさないようにしていきたい。空間づくりを仕事にしている自分にとって、それらは常に追求していかなければいけないテーマであると思っています。

今回、はじめて施工管理者という立場の方にお話をうかがい、もともと抱いていた施工管理のイメージが大きく変化した。Vectorworksの活用方法も現場レベルでITを駆使して現場の品質向上に役立てており、丹青社のITリテラシーの高さを実感するインタビューとなった。

取材・文:佐藤理子(Playce) 撮影:里永愛 編集:石田織座(MonitoriPlovdiv編集部)

株式会社丹青社

エーアンドエー株式会社(Vectorworks国内総販売元)