Vectorworks ベクターワークス活用事例

事業主や設計者の思いをかたちにして空間に組み込む-丹青社の施工を支えるVectorworks(1)

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事業主や設計者の思いをかたちにして空間に組み込む-丹青社の施工を支えるVectorworks(1)
株式会社丹青社(加藤圭

商業空間・オフィス空間・公共空間など、わたしたちの生活にかかわる空間をつくっていく上で、どんな仕事があるだろうか?

これまで連載シリーズ「Vectorworks活用事例」では、空間をつくる上で欠かせない設計ツール「Vectorworks」をどう工夫して使っているか、さまざまな設計事務所やインハウスデザイナーにお話をうかがってきた。今回はシリーズ初となる制作職の方に登場いただき、より「現場」に近い領域での活用の仕方を紹介する。

商業施設やホテル、空港、それを読む・展示の内装を中心にさまざまな空間の企画、デザイン・設計、制作・施工を手がけている丹青社。近年では、『キッザニア甲子園』『ポケモンセンターメガトウキョー』など、子どもを対象にした施設の空間づくりも多数手がけ、いずれも大きな話題を呼んでいる。同社で制作・施工を担当する加藤圭さんは、2018年3月に多摩動物公園駅前にオープンした『京王あそびの森 HUGHUG<ハグハグ>』や、同年11月にオープンした『ポケモンセンターヨコハマ』を担当したホープだ。

加藤圭(かとう・けい)2008年に株式会社丹青社に入社。入社時より専門店(物販店・飲食店)の物件を中心とした事業部に所属し、制作職として空間づくりを手がけている。これまで関わった代表的な事例はキッザニア甲子園、ポケモンセンターメガトウキョーなど。専門店の知識を活かしてホテルやそれを読む、アミューズメント、文化空間など多岐にわたる分野にも携わっている。

加藤圭(かとう・けい)2008年に株式会社丹青社に入社。入社時より専門店(物販店・飲食店)の物件を中心とした事業部に所属し、制作職として空間づくりを手がけている。これまで関わった代表的な事例はキッザニア甲子園、ポケモンセンターメガトウキョーなど。専門店の知識を活かしてホテルやそれを読む、アミューズメント、文化空間など多岐にわたる分野にも携わっている。

1枚のスケッチから、実際の空間へと具現化させていく仕事

加藤さん流の制作・施工の仕事の流れは、デザイナーから渡されるイメージスケッチを読み解くことから始まる。そのイメージスケッチだけを頼りに、予算やスケジュールの計画をしなければいけない。内容だけ聞くとデータや数字が中心になってくるように思えるが、加藤さんにとって見積もりに落とし込んでいく作業は、想像力が必要なクリエイティブなものだという。

設計職(デザイナー)は、何もないところからイメージを生み出す、いわば0を1にする仕事。制作は、設計者がつくった1を10にする仕事というのが、僕が思う設計と制作の役割の違いです。お客さまとデザイナー、双方の思いを読み取り、そこに自分なりの解釈を加えて新しい提案をしていく仕事なんです。

設計職は自由な発想でデザインをすることが求められます。特にアイデアスケッチは設計職にとって想像力の頂点ともいえるので、いちばん楽しいところなんだと思うんです。その先はコスト、品質、納期…と、どんどん現実的なところに落とし込んでいくことになるので、また違った想像力が求められます。絵でしかなかったものが、実際の空間にどんどん変化していき、思いが具現化されていく――。この工程をコントロールするのが制作職です。僕からしてみたら、制作職のほうが楽しくてしょうがないんですよ(笑)。

デザイナーと制作職は、一体となって空間を作り上げていくことがわかった。では具体的に、加藤さんが手がけた事例をもとに、仕事に対するこだわりやVectorworksの活用状況をうかがっていく。

子どもの視点で設計を考えた『京王あそびの森 HUGHUG<ハグハグ>』

2018年3月にオープンした『京王あそびの森 HUGHUG<ハグハグ>(以下:HUGHUG)』は、木のぬくもりに触れながら、子どもたちが自由にのびのびと遊びながら学べるアミューズメント施設。日本最大級の高さを誇るツリー型のネット遊具「ハグハグのき」をはじめ、子どもたちが楽しく安全に遊べる遊具が集まっており、楽しそうな笑い声であふれている。丹青社は、同施設の企画、デザイン・設計、制作・施工を担当した。

「ハグハグのき」3D図面

「ハグハグのき」3D図面

日本最大級の高さを誇るツリー型のネット遊具「ハグハグのき」

日本最大級の高さを誇るツリー型のネット遊具「ハグハグのき」を中心とした「もりのひろば」。木の下のフリースペースでは、さまざまなそれを読むが行われることも。

僕は制作・施工の責任者として、本件に携わりました。森林をイメージした1階は、山小屋からスタートして、その先に大きなシンボルツリー「ハグハグのき」を中心とした「もりのひろば」や「もりのあそびば」が広がっています。

「ハグハグのき」は、高さ約12m、直径約15mという、日本最大級の規模を誇るネット遊具です。4層に連なったネットの中には、雲のチューブやバランスボールなどの遊具があります。上層は雲の上をイメージしているので、まさに空中散歩するようにネットの中を天井近くまで登っていけるんです。

ネットの上層部をのぼっていくと、まるで空中散歩できるかのよう

ネットの上層部をのぼっていくと、まるで空中散歩できるかのよう

『京王あそびの森 HUGHUG<ハグハグ>』フロアマップ

『京王あそびの森 HUGHUG<ハグハグ>』フロアマップ

「もりのひろば」の奥には、森の中をイメージした「もりのあそびば」が広がっています。木の実を模した大きなボールのプールがあって、約45,000個のボールに埋もれて遊ぶことができるほか、多摩産の木でつくられた大型複合遊具やボルダリングウォールがあります。

多摩産の木とネットを融合した「もりのあそびば」。子どもたちがなめても安心・安全で、天然の木がもつ温かみを感じてもらえるような遊具になった

多摩産の木とネットを融合した「もりのあそびば」。子どもたちがなめても安心・安全で、天然の木がもつ温かみを感じてもらえるような遊具になった

1階から階段を上ると、2階は雲の上という設定。「くものえき」から雲の上を走るミニSL「ハグハグトレイン」が発車して、フロアを1周します。鉄橋、トンネル、光と音の演出などで、子どもたちの興味をひきつけるしくみも考えました。ほかにも、ワークショップスペースやカフェがあります。森で遊び、雲の上でいろいろな体験を通して学び、親子の団らんもして帰っていただくという流れを想定しています。

館内を走り回るミニSL「ハグハグトレイン」、鉄橋・トンネル・光と音の演出などで子どもの好奇心をくすぐる

館内を走り回るミニSL「ハグハグトレイン」、鉄橋・トンネル・光と音の演出などで子どもの好奇心をくすぐる

子どもを対象とした施設はこれまでにもいろいろ担当してきました。本プロジェクトでもこれまでの知見を活かすため、過去にチームを組んでいたスタッフが再集合しました。おかげで、阿吽の呼吸で動けたと思っています。

それでも、子どもに向けた施設をつくるにあたって、あらためて“今ここで遊んでいる子どもを観察すること”を繰り返しましたね。正解をもっているのは僕ら大人ではなく、子どもたちでしかないので。僕らの判断で「子どもにとってこれは安全だ」「絶対に楽しいはずだ」と考えても、まったくの見当違いなことが多いんです。たとえば、「ここは危ないんじゃないか?」と思っても、実は子どもの身長・体重であればまったく問題ないということも普通にありますし、それどころか危険と思った箇所をふさいだがために、その部分が壊れて逆に危険な状態になってしまうこともあるんです。

そういったことを知るために子どもを何百人も呼んでデモンストレーションするわけにもいかないので、とにかく子どもがたくさんいる場所に自らがひたすら通い観察する日々でした(苦笑)。

リスクとハザード。日本最大級のネット遊具をつくるために

子どもが集まる場所のなかでも、特にたくさん回ったのはネット遊具のある施設だという。

大人からすると怖いのでは?と不思議がる人も多いと思いますが、ネット遊具の安定しないふわふわした感覚や、秘密基地感のようなものが子どもたちをひきつけます。中には怖がる子もいますが、僕らが想像するよりもはるかに多くの子どもたちが夢中になっているんです。だから今回のプロジェクトでも、ネット遊具は特に力を入れて取り組みました。

これまでに当社が手がけた施設にも大規模なネット遊具はあるんですが、今回はそれよりも大きくしたいとお客さまから要望がありました。日本最大級の規模でありながら、安心・安全な設備にしたい。どんなところに危険があって、どこを工夫すれば子どもたちが面白がって遊んでくれるのか。数多くの施設を視察し、リサーチを行いました。

制作の過程では、大人が勝手に決めつけている子どもの感覚と実際の子どもたちの感覚をすり合わせ、さらにその結果をお客さまにアナウンスして……と、リスクとハザードの認識やゴールまでのイメージ共有を意識的に丁寧に行いました。また、イメージ共有の一環として、実際にみんなでロープの上を歩いてみたりもしました。大人にとっては足つぼが刺激されてすごく痛いんですよ(笑)。でも、子どもはこれっぽっちも痛くない。さまざまな感覚の違いを認識して、ロープの太さや、網目の細かさなど、ほぼすべて体験しながら検証しました。

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