卒展ポスターからひも解く、桑沢デザイン生の個性と面白さ

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卒展ポスターからひも解く、桑沢デザイン生の個性と面白さ
『POPEYE』や『BRUTUS』の表紙絵も手がけるイラストレーターの片岡徹弥(オカタオカ)さんと、アーティストのCDジャケット、さまざまな展示会のフライヤーを手がけるグラフィックデザイナーの加瀬透さんは、ともに桑沢デザイン研究所ビジュアルデザインコース夜間部の2011年卒業生。プライベートでも仲がいいというお二人が、直近の2017年、2018年のポスターを連続して手がけています。これまでも毎年ユニークな卒展ポスターが多い桑沢デザイン研究所ですが、2018年の卒展を間近に控える今回、ポスター制作の裏側やお二人の卒展・学生時代について伺いました。

※卒業生作品展
総合デザイン科(昼間部)卒業制作作品、デザイン専攻科(夜間部)2年生の選抜作品、基礎造形専攻(附帯教育)の受講生作品を展示。今年度は「桑沢2018」として、2月23日(金)~25日(日)に開催。

同級生がバトンをつないだ2年間

――加瀬さんは2017年の卒展ポスターを手がけられましたが、どのようなオーダーでしたか?

加瀬透さん(以下、加瀬):「自由に考えて。過去のポスターも意識しなくていいですよ」というオーダーでした。でも自由ってすごく難しくて…(笑)。紆余曲折を経て、学校から卒業する、各領域から飛び立つことが共通項かなと感じ、「飛び立つ」ことをコンセプトに提案しました。

加瀬透<br />グラフィックデザイナー、アートディレクター。CDジャケット、広告やフライヤー、雑誌や書籍のエディトリアルデザイン、ロゴなどのデザインを手がける。「水中図鑑」としてバンド活動も行う。<br /> <a href="http://torukase.com/" target="_blank" rel="noopener">http://torukase.com/</a>

加瀬透
グラフィックデザイナー、アートディレクター。CDジャケット、広告やフライヤー、雑誌や書籍のエディトリアルデザイン、ロゴなどのデザインを手がける。「水中図鑑」としてバンド活動も行う。

加瀬:また、“派手にしたい”という要望もあり、それには蛍光色を使って応え、「飛び立つ」ことを図像で表し、ふたつの要素を組み合わせました。最終的にモチーフは飛び立つ鳥のようなものになりましたね。

平成28年度 卒展ポスター

2017年 卒展ポスター

――配色も独特ですてきですね。

加瀬:1種類だと弱い気がしたので、2種類制作することを前提に、赤系と緑系の補色を選びました。色が出にくい蛍光は2度刷り、黒いモチーフは蛍光ベタにはノセ、色が乗りにくい銀ベタにはヌキなど、印刷所の担当者さまと話し合って工夫しました。チラシだと裏も蛍光ベタになるんですが、気に入っています(笑)。

――サイズ感も通常とは少し違うのでは?

加瀬:サイズで言うと短辺裁ち落としのA4変型なんですが、まずA4縦の図像をつくってから成り行きで短辺をカットしました。サイズを意識しすぎるとデザインが縮こまってしまう気がしたので、A4縦だけを頭に置きつつ、まずは図像を集中して考えました。無意識下で出来た余白に興味があるのですが、密かにその実験もさせてもらえました(笑)。すべてが勉強になった仕事でした。

――2018年のポスターを制作された、片岡さんにはどのようなオーダーがありましたか?

片岡徹弥さん(以下、片岡):僕も自由にと言われたので、普段から書き溜めたモチーフにしようと考えました。最初は熊を提案したのですが、ポートフォリオをご覧になった浅葉克己所長から直々に「トーテムポールで行きませんか」と。それで鷲、狼、熊、蛙の入ったトーテムポールにしました。4専攻があるという特徴にも合いますしね。元絵は黒いコミックインクと筆で描き、Photoshopで配色しました。

片岡徹弥(オカタオカ) <br /> イラストレーター。雑誌や広告、ミュージシャンのグッズやライブのチラシなどのアートワークのほか、個展の開催やオリジナルグッズの製作も手がける。水中図鑑としてバンド活動も行う。<br /> <a href="http://momonga-pyonpyon-magazine.blogspot.jp/" rel="noopener" target="_blank">http://momonga-pyonpyon-magazine.blogspot.jp/</a>

片岡徹弥(オカタオカ)
イラストレーター。雑誌や広告、ミュージシャンのグッズやライブのチラシなどのアートワークのほか、個展の開催やオリジナルグッズの製作も手がける。水中図鑑としてバンド活動も行う。

平成29年度 卒展ポスター

2018年 卒展ポスター

――印刷面やレイアウト面では加瀬さんが協力されたとか。

加瀬:プレチラシが完成した後に相談をもらったので、本チラシ裏のテキストレイアウトなどをお手伝いしました。でも、ポスターをシルク印刷にすることだけは決まっていたよね? フライヤーはオモテが6色だから相当コストがかかっているはずです(笑)。印刷所には6色機がなかったのでたぶん2回刷っているはずです。

フライヤー見本 トーテムポールの形に切り取られるデザイン

フライヤー見本 トーテムポールの形に切り取られるデザイン

片岡:そうそう。なかなかできない仕様だから嬉しかったです(笑)。シルク印刷でDMと同じ地色を敷くのは難しいので、近い色で金門というクラフト紙を選んだり、印刷所の方と話したりもしましたね。普段の仕事はイラストを描くまでで終わる場合が多く、紙や印刷所の手配はしないので、貴重な体験でした。

各自の個性に「桑沢らしさ」が滲む卒展ポスター

それぞれ個性が出ている卒展ポスター。左から「桑沢2016」、「桑沢2015」、「桑沢2014」

それぞれ個性が出ている卒展ポスター。左から「桑沢2016」、「桑沢2015」、「桑沢2014」

―こうして歴代の卒展ポスターを見ていても、それぞれ表現スタイルはまるで違うのに、共通項として「桑沢らしさ」が滲みでていることを感じます。卒展ポスターを担当されるのは基本的に卒業生の方々だとお聞きしましたが、ご自身も含め、この学校で学ばれた方々に培われる不思議な「桑沢らしさ」には気がつかれていましたか?

片岡:なんとなくわかります。雑誌やWebで「この人は桑沢出身っぽいな」と見るとほぼそうですし。都会っぽいというか、やっぱりここの場所が大きいと思います。渋谷だからこそ、郊外とはまた違った感性が培われているんでしょうね。

――今回一緒にお仕事されていかがでした? お互いの良さを再確認したこともあったのでは。

加瀬:普段からなるほどと思う瞬間がたくさんありますが、今回改めて、片岡くんは自分のペースがしっかりあって、力まず素直にやっているのに彼の作品になるのが羨ましいと思いました。それを横目で見つつ、自分は自分でできることをやろうとまた振り返ってます。

片岡:加瀬くんは学生時代から物事を先取りする人、という印象があります。僕らが仲良くなるきっかけになったZINE(ジン:少部数で発行する自主制作の出版物)も、桑沢では最初期に作り出した人だと思うし、彼の行動から新しい物事を知ることも多いので着眼点が優れた人だと思っています。卒展ポスターも「らしいな」と思いました。デザインが決まるまでは苦労していたけど、できたものを見るとちゃんと加瀬くんらしくなっていたので。

加瀬透と片岡徹弥のインタビュー画像

学内、学外で自分の表現と方向性を見つけた学生時代

– 学生時代のお話も伺えますか。桑沢の夜間部を選ばれた理由は?

片岡:高校時代から美大に行きたかったのに事前準備が必要だとも知らなくて…。高3の引退までラグビー部にいたので全然準備が間に合わず、受験したデザイン科に落ちてしまいました。浪人できなかったので一般の公立大学に進学したのですが、そこで桑沢で教えていたという先生と出会ったんです。その先生や卒業後に桑沢へ進学した先輩にお話を聞き、最終的に夜間部への進学を決めました。

加瀬:美術に触れることのできる環境で育ちましたが、僕自身はずっと興味がなく、一度はそういったことに直接関係のない四年制大学に進学しました。それが20歳の頃から絵を描くことをきっかけに何かつくることに携わりたいと思いはじめ、先生に「デザインの学校に行ってみたい」と相談しました。桑沢の夜間部に入った卒業生を紹介してもらい、夜間部の進学を決めました。当時は「この試験に落ちたらやばい」と焦っていたので、相当勉強しました。入学直後も目が血走っていたと思います(笑)。

――当時はどんな学生でしたか?

片岡:昼は写真系出版社でアルバイト、夜は学校という日々でしたね。

加瀬:僕も昼はアルバイト、夜は学校、帰って課題、翌日起きてまたバイト。本当に濃密な2年間でした。初日の授業で隣の子に「Photoshopって何?」と聞くほど知らないことばかりだったので、入学当初から図書室に入りびたりでした。

片岡:今思うとイラストを描きはじめるまでの1年半は、デザインがわからなくてずっと授業が辛かったんです。手を動かしてつくる課題は楽しくてのびのびできたけど、Illustratorなどを使う課題はさっぱりでしたね……。

加瀬透と片岡徹弥のインタビュー画像

加瀬:でも、そういう方でも授業などを通じて自分の得意なことを見つけることが、桑沢だとできる気がしました。さまざまな視点から、写真やイラストなど幅広い表現に触れられてよかったと思います。最近はそう悩まなくなったけど、結局自分に向いていると思うことや興味があることしかうまくいかない気がします。自分にはできないことをできる人がたくさんいる。そんなクラスで2年間を過ごすうちに「僕はグラフィックデザイナーが合っているのかなぁ…」と思った気がします。

片岡:僕は写真も好きで大学時代から撮っていたので、カメラマンの選択肢もありました。でも視野が狭かったから、スナップが好きだけど「コンセプトがないからダメ」、デザインも「個性的なデザインができないとダメ」と思い込んで。結果的には楽しく取り組めるイラストに辿り着いたんですよね。

――そんな2年間の集大成となった卒展ですが、思い出はありますか。

加瀬:懐かしいけれど、今改めて見ると恥ずかしいですね。父が卓球が好きで身近だったのでテーマにしたんだと思います。卓球のゲームの仕組みを平面でどう表すかを考えた気がします。よくわからないって思う箇所もたくさんありますが、制作当時はがんばったんだと思います(苦笑)。

加瀬さんの卒業制作:ポスター「Butterfly」

加瀬さんの卒業制作:ポスター「Butterfly」

片岡:僕は今とタッチが全然違うんです。キャラっぽいイラストで、タトゥーを見るのが大好きなのでタトゥーをテーマに描いています。卒業後は等身大の人を書きたくなり、今のタッチに変わりました。

片岡さんの卒業制作:ZINE「Tatoo」

片岡さんの卒業制作:「Tatoo」

――ちなみに、ZINEはこうした学生生活と平行して作られていたんですか。

加瀬:もともと僕が、卒制展で先輩が出していたZINEのような冊子に影響を受け、2010年にTOKYO ZINESTER GATHERINGというそれを読むに片岡くんを誘って参加させていただいたんです。これが自分の中では大きくて、SNS上で気になっていた人々と出会えるようになりました。そこからさまざまなそれを読むに参加するようになったので、2010年のTOKYO ZINESTER GATHERINGは今に至るまでの最初の大きなきっかけだったかもしれません。

アートブックフェアに参加したときのZINE

アートブックフェアに参加したときのZINE

片岡:確かにそうだね。卒業後に出展し始めたアートブックフェアも、僕にとってはもう毎年の恒例行事になっていますしね。

――最後に、桑沢の魅力を教えてください。

加瀬:この学校に入れなかったら片岡くんにも会っていないし、卒制ポスターもやっていない。そう思うと本当によかったと思います。桑沢の夜間部は、いろいろな世代の人の意見や考えを聞けるよさがあります。20~40代までの同級生の作品が同じ講評台に上がる。そんな貴重な経験ができたのもおもしろかったと感じています。

片岡:僕はエディトリアルの授業がすごく思い出深いです。担当の阿部先生はデザインの素晴らしさはもちろん、いろいろな物に興味をお持ちで学生に近い感覚で教えていらっしゃいました。今も展示に来てくださったり、好きそうな本があるよと教えてくださる。そういう一生の出会いが得られる学校だと思います。

取材・文:木村早苗 撮影:木澤淳一郎

■桑沢2018 平成29年度卒業生作品展
日時:2018年2月23日(金)~2月25日(日)
場所:専門学校 桑沢デザイン研究所 渋谷校舎
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