誰もが楽しめる未来の建築、ハイテクノロジーの先のネオアナログへ ー 齋藤精一インタビュー(2)

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誰もが楽しめる未来の建築、ハイテクノロジーの先のネオアナログへ ー 齋藤精一インタビュー(2)

異物を放り込むことで、広場に新しい遊び方が生まれる

大きなビル群を背景に、自然と人工の都市がひとつの風景に共存している風景。「CURTAIN WALL THEATRE」には、そんな六本木の土地性も反映されています。様々な人種や年齢、文化の人がクロスオーバーするからこそ、予測のできない出会いや感情や感覚が生まれる場所でもあると思います。子どもの遊び場が少ない六本木の街で、これほど大きな芝生があるのは東京ミッドタウンだけ。子どもって、芝生とか、自然があるところに集まるんですよね。ただ、きれいに整備された芝生に座ってくつろいだり、走りまわったりするのはけっこうハードルが高い。芝生があるだけでは人は入っていきにくく、たとえば芝生の上に椅子を置くことでその広場はアクティベートされるといいます。だから、広い芝生に「CURTAIN WALL THEATRE」のような異物を放り込むことで、利用者が遊び方を見つけてくれると思うんです。

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公共の場所というと、触れることも登ることもできないオブジェが佇んでいたりするのがこれまでの建築の通例。一方で、最近の公園の遊具ってとてもよくできているんですよ。そういう遊具を、人を惹きつける「アトラクター」と呼ぶのですが、その考え方をヒントに、もっと人が活性化できる空間づくりができないかなという考えもありました。「CURTAIN WALL THEATRE」がアトラクターとなり、東京ミッドタウンの芝生にいろいろな人が集まって遊んでくれたらいいなと思います。「六本木アートナイト」の舞台ともなる六本木で、デザインとの出会いを楽しんでもらいたいです。

18時~21時までの時間帯は、「CURTAIN WALL THEATRE」はライトアップされて幻想的な表情に変わる

18時~21時までの時間帯は、「CURTAIN WALL THEATRE」はライトアップされて幻想的な表情に変わる

その「遊び」をきっかけにして、さらに「建築ってなんだろう?」「アートってなんだろう?」と興味をもってもらえたらうれしいですね。それが、「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2016」のテーマである「ひろがるデザイン」につながっていくはずです。

ハイテクノロジーからネオアナログへ
多くの人々にひろがっていくデザインとは?

今回の作品は、建築のあり方をあらためて考えさせてくれるきっかけにもなりました。可動建築というのはこれまでにもいろいろと議論されてきて、僕らもつくってきましたが、実は最近は「可動しない建築」の可能性についても考えているんです。そもそも可動させる目的というのは、建築がアップデートされるためじゃないですか。そのときの陽の光をベストな状態で体感するためにとか、もしくは植栽に効率よく水をあげるために可動させるわけです。

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たとえば、ライゾマティクスの建築作品にも取り入れているAI(人工知能)。AIを活用することによって、商業施設であればリアルタイムでお客さんの動線を整理することなどが可能になります。でも、実際にコミュニケーションをとり、人に影響を与えるのは、コンピュータではなくやはり人間だと思うんです。建築的反応をAIにやらせるか、人を介して実現するか。つまり、赤い花を植えるべきだというAIの判断を受けて、ドローンが自動的に植えるのではなく、施設を運営している人が赤い花を選んで植えることが求められていくはずです。システムだけでは、すべての問題は解決できない。人が使うためにハードを最適化し、ベストな状態をつくることが、システムのやるべきことだと感じました。

近い将来、ハイテクノロジーがごくふつうになったときに人が求めるのは、きっと、もっとあたたかみがあるもの。アナログレコードやポラロイドカメラがリバイバルしているのも、同じような理由からだと思います。いままでのテクノロジーにもう1枚、オブラートがついていくような気がするんです。そうしないと、一般の人が求めるデザインと、プロが考えるデザインの乖離がいっそう激しくなっていってしまう。いまがまさに、両者を近づけるチャンスなのではないでしょうか。UXやデバイスをつくっているクリエイターも、そこを考慮してつくると、ほんとうの意味でインテグレートする時代になっていけるはずです。

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今後はおそらく、「ネオアナログ」のような世界へ移り変わっていくのではないかと思います。ライゾマティクスというと、“先進技術を使ったまったく新しいものづくり”というイメージが強く、実際にそうした「魔法使い」的な役割も求められてもいるのですが、僕は早く「魔法使い枠」から脱したいところがあって。そうできれば、「Rhizomatiks Architecture」としてのビジネスや表現の幅も広がっていくと思います。

そのなかで大切にしていきたいのは、幅広い人に反応してもらえるものをつくること。みんながみんな、デザインの知識があるわけではないので、できるだけ目線を低く保つ方法を見つけないと、意匠というものがどんどん排除されていってしまう気がするんです。シンプルなデザインですべてをまかなえてしまうような。そうではなくて、かつて田中一光先生がつくったような、いわゆるデザインというものをきちんと残していき、デザイナーたちがクリエーションを発揮できる世界にしていきたい。だからこそ、目線を下げて、老若男女がちゃんと反応できるものをつくらないといけないと思います。

「CURTAIN WALL THEATRE」も、裏のシステムはハイテクですが、表はとてもローテクでわかりやすいもの。人それぞれに楽しみ方は違うはずです。思うがままに、自由な遊び方を見つけてほしいですね。

「Rhizomatiks Architecture」のメンバーのひとり佐藤大地さん(左)と齋藤精一さん

「Rhizomatiks Architecture」のメンバーのひとり佐藤大地さん(左)と齋藤精一さん

「CURTAIN WALL THEATRE」特設サイト https://architecture.rhizomatiks.com/s/works/cw_theatre/

「CURTAIN WALL THEATRE」特設サイト

構成・文:平林理奈 撮影:長谷川健太

■「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2016」
開催日時:2016年10月14日(金)~11月6日(日) ※雨天一部中止
会場:東京ミッドタウン (東京都港区赤坂9-7-1)
公式サイト:

「デザインを五感で楽しむ」をマスターコンセプトにした、東京ミッドタウンの大型デザインそれを読む「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2016」。10回目を迎える今年は、「ひろがるデザイン」をテーマに、トップクリエイター集団「ライゾマティクス」によるインスタレーション作品「CURTAIN WALL THEATRE」を展開。ほかにも、日本各地のモノづくりや暮らし、サイエンスなどさまざまな分野に“ひろがる”デザインを体験できるコンテンツが用意されている。