サイトリニューアルした「卒展」、ロゴデザインを手がけた大原大次郎さんにインタビュー!

サイトリニューアルした「卒展」、ロゴデザインを手がけた大原大次郎さんにインタビュー!
1998年にスタートしたMonitoriPlovdivの「」。歴史が長いだけあって、「卒展特集に載せてもらったことがあります」とおっしゃっていただくことがたびたびあります。クリエイターやデザイナーの皆様に支えられているんだなあ、と改めて実感するありがたい瞬間です。

少し前の話になるのですが、「卒展特集」は2016年版からフルリニューアルしました。名称も「卒展特集」改め、ストレートに「卒展」に変更。そしてこの機会に新たにロゴも設けました。デザインを担当していただいたのは、タイポグラフィを基軸としたグラフィックデザインが人気の大原大次郎さん。実は大原さんも「卒展特集」(2003年)で卒業制作を掲載されたおひとりなんです!制作していただいたロゴのコンセプトだけでなく、せっかくなので卒業制作の思い出、デザイナーを志す学生へのメッセージなどもうかがいました。

「卒展」のロゴのコンセプトとつくり方

ふだんからタイトルデザインを組むときに、楽しいカタチは探っているけれど、言葉の意味を失ってしまうカタチ遊びにならないように、そのちょうど良きところを探しています。

「卒業制作展」のことを省略して、「卒展(そつてん)」と呼んでいるのが愛嬌があるというか、その呼び方が立ってくると良いなあ、それを組み込めないかなあ、と考えてつくりました。最初は漢字だけで構成していて、その下にルビのようにアルファベットを置いていたのですが、最終的にはそれぞれの文字の中に「SotsU」と「TeN」を配置しました。完全に漢字の形に即している訳ではありませんが、可読性があってルビとしても機能させています。

大原大次郎さんデザインの「卒展」ロゴ

大原大次郎さんデザインの「卒展」ロゴ

学校を想起させる色はいくつかあると思うんですけど、そのステレオタイプにはまりすぎずないように何パターンか探り、ローマ字を配置したことで寒暖差のあるツートーンにしようと決めました。「SotsU」と「TeN」の文字を際立たせるため、周りは少し抑えめにしています。サイトにもなじみやすいトーンになったと思います。

使っているのは水彩の絵具です。アウトラインをとった下書きを敷いて、上に紙を被せて下から光を当てて、丁寧になぞっていきます。パーツごとにうまくいったところを拾っていって、最後にPhotoshop上で合成していくというやり方です。

大原大次郎さんの仕事机

大原大次郎さんの仕事机

実はWebに自分の名前がはじめて載ったのはMonitoriPlovdivの「卒展」なんですね(※大原さんは武蔵野美術大学の基礎デザイン学科を2003年卒業)。

自分の素直じゃないところだと思うんですけど、当時は卒業制作の「制作」という部分に義務感のようなものを感じていて、「卒業したかったら卒業制作をしましょう」と言われているみたいで。デザインの依頼主がはっきりしないなかで、テーマをちゃんと持って制作するという課題設定にあまりなじめませんでした。

将来、エディトリアルとかブックデザインの方に進めたらいいなあというのもあったので、本来は実行委員とか別の人がやるべきところを、基礎デザイン学科の同級生全員にインタビューして、制作物紹介のメディアをつくったのが卒業制作です。

基礎デザイン学科52作品の断片を収集し、カードに集約したもの。表はカラーで作品のビジュアル、裏は製作者の紹介と作品についてのコメントという構成。基礎デザイン学科の展示作品の一角には必ずこのカードが置いてあり、自由に収集し持って帰ることが出来る

基礎デザイン学科52作品の断片を収集し、カードに集約したもの。表はカラーで作品のビジュアル、裏は製作者の紹介と作品についてのコメントという構成。基礎デザイン学科の展示作品の一角には必ずこのカードが置いてあり、自由に収集し持って帰ることが出来る

みんなおもしろいものをつくっているから、単純にそれを紹介するメディアをつくるだけで、十分に成立するんじゃないかと思しました。制作しない卒業制作というか。自分が何かをつくる以外のところでできないか?ということからはじまりだったんですね。

そこで「編集」ってなんだろう?と考えて、「集めて編む」ということが「編集」なら、じゃあ「集めない」とか「編まない」ってどういうことだろう?と、どんどん思考をバラしていった結果、始点と終点がないカード状のブックデザインの形になりました。このカードをそれぞれの卒業制作の横にラックを設置して、お客さんが取って帰れるようにして、興味がある人は全員分持って帰るし、ない人はもらわなくて良い。「メディアを集めて編むカード型の本です」と言ってしまえば、それ自体がメディアになる。そういうことをやりました。

DSC09951

それまで僕はあまり積極的に学校には関わってなくて、先生ウケが良いタイプではなかったんですが、ひとつの考え方、編集なら編集、制作なら 制作などを、スライスして疑ったりしながら進めていったり、考えを深めていくのが基礎デザイン学科らしいというか、基礎デ的な思考過程ができ上がっていった実感と、そのアウトプットを見てもらえた実感がありました。卒業制作で初めて名前を呼んでもらえたくらいだったんじゃないかな(笑)。すごく思い出深いですね。向井周太郎先生がカードを手遊びしながら楽しんでくださっていた様子も、ずっと印象に残っています。

印刷所とのやりとりも印象深くて、武蔵美の近くにある印刷所さんに何回も行き来して。1種類のカードごとに製版するととてつもない額になるので、効率の良い面付け方法を教えてもらったりだとか。たしか2000枚×60人分くらい刷ったと思うんですが、部屋がダンボール箱で埋もれました(笑)。あと、途中でMacのデータが飛ぶというアクシデントもあって、部屋のストーブを点けた瞬間に「バチン!」となってブレーカーが落ちて。ハードディスクごと全部飛んだので、「ああ、もう卒業できない……」と頭が真っ白になりましたね(笑)。

お客さんが集めながら編んでいくカード式の編集メディアは、その行為を楽しんでもらえた実感や、デザインや編集の手応えがあった反面、再考の余地や反省点もありました。残酷な言い方ですが、制作物のビジュアルの質や趣向にはバラつきがあって、人気のものとそうでないもの、在庫が大量に余ってしまうものもあり、その後の活動において在庫リスクについて考慮するようになったり、デザイン優位で気軽にモノをつくらならなくなったというか、慎重に考えるきっかけになりました。

DSC09947

デザイナーを志す学生へ

制作物を発表して社会と接続した時点で、社会に出ていない学生でも土俵は一緒だと思っていて。そこがデザインの公平性で、コネクションやキャリアとかじゃなくて、つくった物で見てもらえるところがあるというか。大御所でも、若手でも、学生でも、フラットにやりあえる面白さと厳しさがあると思うので。

そういう意味では、自分から助言とかはないです。いまは時代的にも発信がしやすかったりするので、安心して邁進してくださいという感じもありつつ。でも美大ではお金というか経済まわりについてほとんど触れないんですね。社会に出てから自分で学ぶというところがあるので。デザイン教育で組み込むべき課題はあると思っています。デザインは社会と密接なものなので、文字組やレイアウトなど造形の技術以上に、継続的に仕事にしていく上で、学生時からその仕組みを理解したり、意識できる場が増えたら良いんじゃないかと思っています。

ごめんなさい、「安心して邁進してください」は罠ですね(笑)。経済の仕組みや、予算組、デザイン費について理解したり、持続可能な仕事に展開していく方法などはとても大切な業務のひとつなので、そのあたりに着手するのは早いのに越したことはないと思います。自分としてもそういうことをもっと学生時に分かっていたら、また違っていただろうなあと思います

大原大次郎 omomma™

卒展 – デザイン・アートを学ぶ学生の卒業制作展