【メディア芸術祭20周年】みんなの記憶の中にあるものを呼び起こす-伊藤ガビンインタビュー(2)

[PR]
【メディア芸術祭20周年】みんなの記憶の中にあるものを呼び起こす-伊藤ガビンインタビュー(2)

-アーツ千代田 3331での展示は、実際にどのような感じになりそうですか?

それがすごい難しくてね(笑)。今年の前半に「GAME ON~ゲームってなんでおもしろい?」っていう展覧会があったんですけど、あれはゲームを実際にさわれるようにしてある展示でしたが、初期のゲームはなんの説明もなくてもいきなり遊べるんですよ。基本的にはアーケードゲームだし。でも、さっき言ったような大作主義のゲームになってくると、10時間とか20時間かけないとおもしろさがわからないという方向に行ってしまったので、展覧会の会場で遊ぶっていうのは不可能なんですよ。

だから、みんなの脳内にあるゲームの体験を掘り起こす作業ということしかできない。「あの時これやったよなあ」とか。そういう意味ではインタラクティブである必要はなくて、映像で十分に伝えることはできる。

photo54

メディア芸術祭がもともと抱えている問題ですけれども、そもそも漫画は展示で見るものではないじゃないですか?原画が展示されていますが、原画ってすごく特殊な存在で本来は産業廃棄物みたいなもんなんですよ。アニメもセル画をフィルムにしたものとか捨ててたわけだし。でも、漫画の生原稿を目の当たりにするとやっぱり迫力があって、そこは微妙なところなんですよね。漫画の表現自体は展示会でみるものではなくて、家でゴロゴロしながら見るのが正しい方法なので、メディア芸術祭って常にその矛盾を抱えているというか。

Webサイトにいたっては、もはや存在しないっていうのもたくさんあるし、ちゃんと展示しようとすると本当は昔のマシーンを使わないといけない。だから、みんなの記憶の中にあるものを呼び起こすことが中心にならざるを得ないんです。小さい会場に20年分を詰め込むわけだから相当無理があるんですよね。どこまで出来るかなあって感じでやっていますけど(笑)。

あと、許諾の関係の話でいうと、20年も歴史があると色々な問題が発生してきちゃうわけなんですよ。たとえば、ボーダフォンっていう会社はないわけで(笑)。そういったこともメディア芸術祭の資料を将来的にどういう風に利用していくか、メディア芸術と呼ばれるもの全般が背負っている問題なので、今回ちゃんと考える良い機会にはなりました。

photo29

-個人的に伊藤さんが関わっている仕事の中で、「TEE PARTY」や「PHYSICAL TEMPO」とかが大好きなんですけど、どういうきっかけからインターネットでのある種出会いの場所をつくろうと思ったんですか?

基本的には流れに身を任せてたんですけど。「TEE PARTY」に関していうと、雑誌が減っているなかで、イラストレーターをどうデビューさせていこうかなと考えたんですよね。

イラストレーターのなり方って、雑誌の後ろのほうの占いの12カット描きますみたいなところからはじまるんですが、数100円のレベルの稼ぎなんだけど、「TEE PARTY」で自分の作品をコンスタントに出していけるって人は、ちょっと小銭を稼げて作品が増える、そういう場になればいいかなと思って。

ウェアラブルJPEGショップ「TEE PARTY」。オンデマンドでオンラインなTシャツ屋。タナカカツキ、長尾謙一郎、天久聖一、寺田克也、しりあがり寿、花くまゆうさく、プラープダー・ユン、横山裕一、細金卓矢、ENLIGHTENMENT、Quzmo、古屋兎丸など、さまざまなデザイナー・アーティストが参加。 http://teeparty.jp/

ウェアラブルJPEGショップ「TEE PARTY」。オンデマンドでオンラインなTシャツ屋。タナカカツキ、長尾謙一郎、天久聖一、寺田克也、しりあがり寿、花くまゆうさく、プラープダー・ユン、横山裕一、細金卓矢、ENLIGHTENMENT、Quzmo、古屋兎丸など、さまざまなデザイナー・アーティストが参加。

サイトを立ち上げたのは偶然です。Tシャツを印刷する工場からサイトリニューアルしたいって話があって、「単にサイトリニューアルしてもしょうがいないですよね」って話をして、「こういう企画で事業として立ち上げた方がいいんじゃないですか?」って言ったら、自分たちがやることになっちゃった(笑)。

見て、触って、嗅げる、物理世界の店舗=PHYSICAL TEMPO http://p-tempo.com/

見て、触って、嗅げる、物理世界の店舗=PHYSICAL TEMPO

「PHYSICAL TEMPO」の話でいうと、外に卸すこととかをまったく考えもしないで、インターネットで作品をつくっている人はいっぱいいるなあと思っていて。たまたま店をやりませんかって依頼がきたから、そういうネット上で一回見たことあるだけのような人たちを「ドンっ!」と集めました。あれをやったことがきっかけで作家になった人いっぱいいて、そういう意味ではうまくいったのかなと。インターネットの中にいる、世に出ていない“明らかにおもしろい人”を後押しするっていうのは趣味なんですよね。もう性癖に近いですね(笑)。

photo33

でも、自分たちでやっていくことの限界というか、すげー大変だなって思いました(笑)。本当に土日休みはゼロだったので。商売上手だったら、あの時点でちゃんとパーマネントな店を出しているんでしょうけど、自分たちは完全に副業みたいな意識なので、それはなかなかできないですね。

-ちなみに、いまは会社というかチームとして、どういう体制で動かれているんですか?

ここの会社(ボストーク株式会社)は誰もいないんですよ、誰もいないっていうか、勝手にいるんですよ人が。誰も雇ってなくて、いす(たえこ)さんとかもそうなんだけど、基本的には勝手にいるスタイル。前は10人くらいいたんだけど、そのなかの半分くらいのメンバーは新しい会社を創ったので、ドーッと抜けてデザインチームがいるだけ。机が空いたなって思ってたから、建築系のチームが今週くらいから入りはじめたんですよ。いままで全然そういう人たちと一緒にやってくることがなかったから、また何か新しいことができるかなと思っています。

でも、ちゃんとした会社経営ができないっていうのが基本的にあるんですよね。しっかり雇って20人を食わしていくには、やりたくない仕事をやらなくちゃいけない瞬間が出てきちゃうし、それはけっこう難しいですよ。営業みたいなことは全然したいと思わないしね。

-最後に、メディア芸術祭に伊藤さんご自身の作品をまた出されることは考えていますか?

そうっすねー。出しますか、じゃあ(笑)。ちゃんと出せそうな作品はいくつかあって、出すかどうかはわからないんですけど、ありますよいろいろ。いまは言えないですけど。

photo63

聞き手・文:瀬尾陽(MonitoriPlovdiv編集部) 撮影:寺島由里佳

■「文化庁メディア芸術祭20周年企画展―変える力」
「変化」をキーワードに、過去に審査委員を務めた4人の監修者によって選ばれた、歴代の受賞・審査委員会推薦作品の展示や上映などを行い、変容し続けるメディア芸術の多様な表現を紹介。メディア芸術祭の20年の歩みを辿ることで、メディア芸術と、それを取り巻く社会、文化、テクノロジーの「変化」や「流れ」を感じ取ることができる貴重な機会となるだろう。
【会期】
2016年10月15日(土)~11月6日(日)
【会場】
メイン会場:
アーツ千代田 3331(東京都千代田区外神田6丁目11-14)
開場時間=11:00~19:00 ※入場は閉場の30分前まで
会期中無休
サテライト会場:
NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、UDX THEATER、国立新美術館 他
※開館時間、休館日は会場によって異なります。
【入場料】
無料 ※一部のそれを読むは有料
【主催】
文化庁メディア芸術祭20周年企画展実行委員会
【公式ウェブサイト】
biceps-ua.com/

http://kls-agency.com.ua

http://profvest.com