【連載】『つなぐ(と)まざる(が)場をつくる』-第1回:西澤明洋(エイトブランディングデザイン)

【連載】『つなぐ(と)まざる(が)場をつくる』-第1回:西澤明洋(エイトブランディングデザイン)
近年、デザイナーや建築家、クリエイターによる「場づくり」の活動がおもしろい。それを読むやコミュニティ、実店舗など、その表現方法やアウトプットはさまざま。では、なぜクリエイターたちは本業だけでは飽き足らず「場」をつくるのか……?もしかしたらそこにはなにか法則があるのかも知れない。これは「場づくり」に取り組むクリエイターたちに改めてお話を聞くしかない……!そう考えてスタートしたのが、本連載『つなぐ(と)まざる(が)場をつくる』です。記念すべき第1回は、エイトブランディングデザイン代表の西澤明洋さん。屈託のない笑顔と軽快なMCで、第一線で活躍するクリエイターの仕事(ひいては生き方まで)をひも解く、「クリエイティブナイト」を毎月開催してきた。「場」をつくることは「コンテクストと出会うための旅に近い」と語る西澤さんに、「場づくり」の魅力についてうかがいました!
社内にとどめるのはもったいない!開かれた「場」で知識を共有する

——まずは「クリエイティブナイト」をはじめたきっかけについて教えてください。

「クリエイティブナイト」は、実は10回目までは社内の勉強会を兼ねたそれを読むだったんです。エイトブランディングデザインにとってコアなパートナーたちを呼ぶそれを読むとして、その人たちがどういう考えで仕事をしているのかを語っていくことを、向こうの事務所のスタッフさんも交えて実施していました。最初はいまとは全然スタイルが違っていて、ケータリングを呼んでみんなでごはんを食べながら行う、晩餐会みたいな雰囲気でした。そこで僕たちとパートナーの双方のスタッフが考え方を共有しながら、交流を図っていました。

でも、それを続けているうちに「ちょっとこれは社内だけにとどめておくのはもったいなさすぎるな……」って気持ちが出てきたんです。もっとみんなで共有したほうがいい知識ばかりだったので、11回目からはカタチを変えて、ゲストを招いてお客さんにも入っていただくそれを読むとして運営しています。南青山にこのオフィスを構えているのも、もともとそういった場所をつくりたいなという思いがあったので、この広さのフロアをつくっています。

エイトブランディングデザイン オフィス風景

また、「クリエイティブナイト」という場を持つにあたって、ヒントになっているのは、Suppose design officeの谷尻誠さんが主催している「THINK」というそれを読むなんです。「THINK」では、ゲストに喋ってもらってから、谷尻さんとディスカッションして、打ち上げにお好み焼きを食べに行くのが恒例らしいんですよ(笑)。何の変哲もない広間に、発泡スチロールを切り出しただけのお手製の椅子のようなものを置くだけで、そこがトークセッションの場になる、建築家ならではのこだわりで空間をつくっています。僕も一度ゲストとして呼んでいただいたことがあるんですが、それがとてもいい体験だったので、僕なりに違うカタチでやってみようと思ったのがクリエイティブナイトでした。

西澤明洋
1976年滋賀県生まれ。株式会社エイトブランディングデザイン代表。「ブランディングデザインで日本を元気にする」というコンセプトのもと、企業のブランド開発、商品開発、店舗開発など幅広いジャンルでのデザイン活動を行っている。「フォーカスRPCD®」という独自のデザイン開発手法により、リサーチからプランニング、コンセプト開発まで含めた、一貫性のあるブランディングデザインを数多く手がける。おもな仕事にクラフトビール「COEDO」、抹茶カフェ「nana’s green tea」、ヤマサ醤油「まる生ぽん酢」、サンゲツ「WARDROBE Sangetsu」、賀茂鶴酒造「広島錦」、芸術文化施設「アーツ前橋」、料理道具店「釜浅商店」、手織じゅうたん「山形緞通」、草刈機メーカー「OREC」、博多「警固神社」、iPhoneアルバムスキャナ「Omoidori」、ドラッグストア「サツドラ」など。

僕は建築学科出身なんですが、学生時代に飲み会をしながら課題をプレゼンする“プレゼンナイト” みたいなことやっていたんですよ。課題のほかにも、有志を募ってコンペに応募して、結果が出る前にみんなでどんなものを出したか発表しながらお酒を飲むっていうのが楽しくて。

「クリエイティブナイト」の活動も、大学の研究室の延長という感覚がずっとある。たぶん建築系の事務所はそういったところが多いと思います。取り組み方を建築からブランディングデザインにカタチを変えただけで、自分のやってることは常に“実験”っていう感覚があるんです。

「クリエイティブナイト」開催時の様子

僕は2~3年に1冊は本を出すことを自分に課していて、これは言ってみれば論文を書いている感じなんですね。一度自分の中で研究テーマが定まったら、プレイヤーとしてプレイしてみて、自分のなかで感覚的なものがまとまってきたら、書き起こして形式化していく。ブランディングデザイン業界では僕がほとんどパイオニアみたいな存在なので、本を書くことで方法論をシェアしたいし、そうすることが後に続くひとたちのためになると思うんです。

これは大学時代に研究していた「ナレッジマネジメント」という方法でもあります。一橋大学の野中郁次郎先生や、経営学者の紺野登さんが提唱しているモデルで、暗黙知と形式知を行き来しながら、知識を増大させてく方法です。クリエイティブナイトでは、方法論について話し合う場として、意図的に実践している部分もあります。

いま『アーキテクチュアル・シンキング』という本を書いているんですが、Webデザイナーの中村勇吾さんや、NOSIGNERの太刀川英輔さん、ライゾマティクスの齋藤精一さん、コミュニティデザイナーの山崎亮さん、日本仕事百貨のナカムラケンタさんなど、建築を学んだ上で、建築以外の道を進んだひとたちに取材しました。本を書きながら、建築と他分野のデザイナーにとってのアウトプットの違いについて「わかった!」と思ったことがあるんです。

建築家がグラフィックやプロダクトのデザイナーたちと大きく異なるのは、建築は徹底的にプロセスのデザインなので、最終的なアウトプットに際して、自分が実際に手を動かしてつくらないことなんですよ。建築をつくるのは大工さんだったり施工会社なんです。プロセスは方法論とも言えるんですが、建築家にとってのアウトプットは方法論とほぼ同じなんです。

もともと建築の分野では、自分たちの課題はみんなでシェアしていくことがおもしろいと考える文化があると思います。プロダクトデザインの場合、アウトプットのシェアってなかなかできないんですよね、パクリになってしまう場合もあるので。たぶん、ここが決定的にほかのデザインとは違う感覚だと思いますね。建築の方法論は、喧々諤々とやりあって、みんなでつくっていくもの。僕がやっているブランディングデザインにもそんな雰囲気ができるといいなと思っています。

コンテクストと出会うための旅としての「場」

——「学び」と「場」の関係性に鍵がありそうですね?

僕は普段から、「デザイン」と「経営」をテーマに、本を読み漁ったり、人に会いに行っています。ライフネット生命の出口治明さんが、「人生を豊かにしてくれる3本柱」は「本・人・旅」だとおっしゃています。本を読むことで、ある思想がまとまってインプットされて、人に会うことで、その人から直接インスパイアされる。そして旅をすることで、自分のいる場所とは違うコンテクストを味わうことができるんです。

社内の勉強会でもよく読書課題を出すのですが、本に求めるのは、新しい知識の獲得というよりは新しい視座の獲得です。本を読むことで、自分のものの見方が変わる。視座が変わることで、いままで触れていた情報の意味が変わるのが快感です。パラダイムシフトを自分に起こしてもらいたいんですよ、本には。

人に会いにいくのは、視座の獲得だけでは独りよがりになってしまうから。人と会うと、小難しい話は置いておいて「ああ、この人かっこいいな」とか「この人のことは好きだな」とか、心揺さぶられる感じがあるんですよね。僕は月1回は会ったことない人に必ず会うことにしています。これはもう最高のレジャーですよ(笑)。会社のメールで送ると仕事の依頼みたいになってしまうので、「会わせていただけないでしょうか」とFacebookでメッセージを送っています。まあナンパですね(笑)。

そして、場を持つことは旅に近いと思うんです。旅をすることは個人的な体験なのでシェアできないんですが、「クリエイティブナイト」という場所をつくってみんなで集まることで、会社とは違うコンテクストがつくり出せるんです。スタッフだけのコンテクストのなかでは、アウトプットにおいて予想外の一手というのはなかなか生まれない。「クリエイティブナイト」みたいな場で、いろいろなゲストとお客さまと一緒にいると、自分でも思ってみなかった思考にたどり着いたり、発見があったりするのが楽しいですね。

「クリエイティブナイト」をやる上で自分に課しているのは、しっかりとその人のコンテクストを掘り下げることです。はじめの1時間ではその人の自己紹介がてらセミナーをやっていただいて、後半1時間はみっちりとその人自身について掘り下げていきます。幼少期の体験から、いまの仕事にいたるまで、「だからこういうアウトプットになるのか」という、コンテクストを読んでいくのが好きなんです。終わったあとの打ち上げでは、「こんな風に自分をまとめてくれることはあまりないから嬉しい」と言っていただけることも多いんです。そういうときは、ちょっとしてやったり感がありますね。「解いたぞ!」みたいな(笑)。

その人の「生き方そのもの」がクリエイティブを生む

——「クリエイティブナイト」にはどんな人が参加していますか?

「デザイン思考」や「デザインシンキング」という言葉が流行っている影響なのか、お客さまの半分くらいはビジネスマンだったりします。クリエイティブナイトは、クリエイティブなことしたいなって思って参加していただける全員のためのそれを読むなので、かならずしもデザイナー向けというわけでもないんですよ。

「デザイン思考」に注目が集まっているのはいいことだなと思います。一般的なビジネスマンの人がデザインに興味を持ってくださっているということなので。ただ、手法やテクニックとして「デザイン思考」を使っても、イノベーションは起きないっていうことだけは、はっきり言えることだと思います。なぜクリエイターやデザイナーが新しいことを考えついたり、実践しているのかというのは、方法論ではなくてそのひとの“生き方”みたいなところにコアがあると僕は思っています。「クリエイティブナイト」で一番掘りたいのはそこなんですよね。人生の目的みたいなものとか、テーマみたいなものがそもそもクリエイティブだからこそ、アウトプットがクリエイティブなんだと思うんですよ。そういったものがないままテクニックだけ模倣しても、クリエイティブにはなれない。

そのひとの作品よりもコンテクストを掘り下げると、最後は人に行きつくんです。僕がそれを読むを通してみんなとシェアしたいのは、「世の中にはこんなにおもろいクリエイターがたくさんいる!」ということなんです。そのことに僕は刺激を受けるし、がんばろうって思える。それは参加してもらえる誰にとってもそうだと思うんです。

——ちなみに、インテリアライフスタイル展の会期中に実施される「おでかけクリエイティブナイト」は、どんな違いがあるんですか?

インテリアライフスタイル展では、会期中に何本かトークそれを読むが実施されていて、その中のひとつとして今回お声がけいただいたのが「おでかけクリエイティブナイト」の開催のきっかけです。今自分たちがやってるクリエイティブナイトの番外編のようなイメージでやろうと思っています。普段は社内にお客様を呼び込んでおもてなしするんですが、インテリアライフスタイルの場合は僕らが出張していくカタチなので、ゲスト選定に関しても切り口を少し変えています。「デザイン経営」をテーマに、デザインやクリエイティブの力を、経営に上手く活用していこうという視点をもっている経営者の方々がゲストです。クラシコムの青木耕平さんや、スマイルズの遠山正道さん、中川政七商店の中川政七さんらをゲストとしてお招きしています。このそれを読むでは、クリエイティブの知恵ではなくて、クリエイティブを“活かす”知恵について掘り下げたいなと思っています。

おでかけクリエイティブナイト 開催時の様子

解くことと、問うこと

——8月2日には、私たちMonitoriPlovdivとの共催で「みんなでクリエイティブナイト」を実施します。ゲストに谷尻誠さんとナカムラケンタさんとお招きして、「場とデザイン」についてじっくり語り合ってもらうつもりです。「みんなでクリエイティブナイト」にはどんなことを期待しますか?

「みんなでクリエイティブナイト」とは?

エイトブランディングデザイン&MonitoriPlovdivが共同開催する「みんなでクリエイティブナイト」は、「◯◯とデザイン」(毎回「〇〇」のテーマが変わります)をテーマに、 社会や⼈の⼼理にデザインがどのように作⽤するのかを問い、デザインの役割や価値について、“みんな”で考えていくそれを読むです。ブランディングデザイナー⻄澤明洋さんをファシリテーターに、各回のテーマにあったクリエイター2組をゲストに迎え、さまざまな角度からテーマを掘り下げていきます。記念すべき、第1回目のテーマは「場づくりとデザイン」です!ゲストには、谷尻誠さん(suppose design office代表)とナカムラケンタさん(日本仕事百貨代表/株式会社シゴトヒト代表取締役)をお迎えします。

「クリエイティブナイト」という場では、「解く」ことでナレッジを共有することを実施していますが、「みんなでクリエイティブナイト」では、解くことではなく、「問い」を残すようなやり方ができたらいいなと考えています。

イメージとしては、シゴトヒトのナカムラさんがやっている「しごとバー」や、働き方研究家の西村佳哲さんがやっているワークショップに近いですね。彼らはわざと解くことはせずに、「問い」だけを置いてみんなで考えるということをやっているんです。僕はいつも我慢できずつい解いてしまうんですが(笑)。解いていくにあたって重要な切り口を、彼らは切りすぎずに切り込みだけ入れて、「あとはどうぞ」と終わってしまう。僕が普段やっている「解くこと」とやってることは同じでも、プレイスタイルが違う感じがしますね。頭の筋肉の使い方が違うというか。

「みんなでクリエイティブナイト」では、それを読むの最後に結論があるような、ある種漫才でいうオチのようなものがない方がいいかなと。みんなで考えることができる「問い」を残して終わるぐらいのものを目指せればいいなと思っています。

文:堀合俊博 撮影:寺島由里佳 聞き手・編集:瀬尾陽

みんなでクリエイティブナイト

ゲスト:谷尻誠(suppose design office代表)/ナカムラケンタ(日本仕事百貨代表/株式会社シゴトヒト代表取締役)
テーマ:「場づくりとデザイン」
開催日:8月2日(金)第1部:19:00-20:30 第2部:20:30-21:30
会場:エイトブランディングデザイン(東京・青山)
料金:3000円(第一部のみ2000円)
構成:第一部…トークセッション(1.5時間)/第二部…懇親会 ※軽食あり(1時間)