デザインを社会に定着させるための「新しいデザイン教育」とは?−菅俊一×茂出木龍太

デザインを社会に定着させるための「新しいデザイン教育」とは?−菅俊一×茂出木龍太
「デザイン」という言葉が指し示す意味は、いまさら言うまでもなく広範だ。生活のあらゆるところにデザインがあるとするなら、その未来をつくる「教育」にもデザインは必要だ。多摩美術大学の統合デザイン学科で、従来の領域の区分を取り払い、諸領域を含め横断的に学ぶ新たなデザイン教育の場をつくる、表現研究者/映像作家の菅俊一さん。また一方、デザイン事務所「TWOTONE」にてアートディレクターとして活動しながら、日本大学芸術学部(以下、日藝)デザイン学科にて非常勤講師を勤める茂出木龍太さん。今回、おふたりにうかがったのは、どうやってデザインを教えるかではなく、どうやって教育をデザインするか?そこから見えてくる「新しいデザイン教育」在りかたに迫ります!

いま、デザインの教育現場で伝えるべきこと

——デザインというクリエイティブ領域において、教育がいかに有効なのかということをお聞きしていきたいのですが、いま学生の進路はどのような傾向がありますか?

菅俊一さん(以下、菅):そもそも美大というのは、就職を目指す人と、作家を目指す人の2種類がいるんです。だから一様に「就職率」を出しても、あまり意味がない。そういうこともあり、進路はかなり幅広いですね。広告代理店でプランナーやアートディレクターになる卒業生もいれば、メーカーでインハウスのデザイナーになる卒業生もいる。まったく関係のない業界で、営業のような職種について、そこにデザインの考えを持ち込む卒業生もいる。自分が考えていたよりも、かなりバラバラになりました。昔は進路として広告代理店がすごく人気がありましたが、最近の潮流を見ると変わってきていますね。

菅俊一 1980年東京都生まれ。表現研究者/映像作家、多摩美術大学美術学部統合デザイン学科専任講師。人間の知覚能力に基づく新しい表現を研究・開発し、さまざまなメディアを用いて社会に提案することを活動の主軸としている。おもな仕事に、NHKEテレ「2355/0655」ID映像、21_21 DESIGN SIGHT「単位展」コンセプトリサーチ、21_21 DESIGN SIGHT「アスリート展」展示ディレクター。

菅俊一
1980年東京都生まれ。表現研究者/映像作家、多摩美術大学美術学部統合デザイン学科専任講師。人間の知覚能力に基づく新しい表現を研究・開発し、さまざまなメディアを用いて社会に提案することを活動の主軸としている。おもな仕事に、NHKEテレ「2355/0655」ID映像、21_21 DESIGN SIGHT「単位展」コンセプトリサーチ、21_21 DESIGN SIGHT「アスリート展」展示ディレクター。

茂出木龍太さん(以下、茂出木):それは日藝でも同じですね。僕がゼミを持ってから8年くらいなんですが、当初は「広告代理店を目指して当たり前」という雰囲気があった。ここ最近はかなり変わって、自分で手を動かしたいというクリエイター志向の学生もいるし、サービス側やゲーム業界に行く卒業生も多いです。特にゲーム業界は、いわゆる大手の会社だけではなく、スマホゲームなど新しくて勢いがあるところもたくさん出てきているので、その辺を志望する学生もかなり増えています。

菅:うちも、ゲーム業界を志望する学生はすごく多いですね。

――茂出木さんのゼミでは、どういうことをテーマに教えられているんですか?

茂出木:僕が教えているのは、「コミュニケーションデザイン」「メディアデザイン」と呼ばれている領域です。その中でも、UXとUIのデザインをメインで教えています。将来、広告代理店でプランナーやアートディレクターになることを目指しているけど、いまの時代やっぱりUXやUIのことを知らないと……という意識で受講している学生もいます。

最近では、プロダクトデザインを勉強するにしても、家電についているディスプレイの中までもデザインが求められるので、こういった観点でUX・UIに興味がわく学生も多いですね。UIに興味がある学生も多いですね。プロダクトデザインやカーデザインのメーカーからも、UIデザインができるデザイナーを探しているとよく聞くので。

茂出木龍太 1976年東京都生まれ。日本大学藝術学部デザイン学科卒業。Business Architects Inc.などのデザイン会社を経て、2010年5月、デザインスタジオ TWOTONE INC.を設立。国内大手企業のブランディングサイト、プロモーションサイト、アプリケーションなどのインタラクティブコンテンツのアートディレクションや、映像の企画演出を手がける。CANNES LIONS Titanium Lion、TIAA グランプリ、D&AD Yellow Pencil、グッドデザイン賞インタラクティブデザイン賞、文化庁メディア芸術祭優秀賞など。日本大学藝術学部非常勤講師。

茂出木龍太
1976年東京都生まれ。日本大学藝術学部デザイン学科卒業。Business Architects Inc.などのデザイン会社を経て、2010年5月、デザインスタジオ TWOTONE INC.を設立。国内大手企業のブランディングサイト、プロモーションサイト、アプリケーションなどのインタラクティブコンテンツのアートディレクションや、映像の企画演出を手がける。CANNES LIONS Titanium Lion、TIAA グランプリ、D&AD Yellow Pencil、グッドデザイン賞インタラクティブデザイン賞、文化庁メディア芸術祭優秀賞など。日本大学藝術学部非常勤講師。

菅:実際に、家電も車もUXやUIが重要になるので、プロダクトデザイナーになりたいからこそ、その辺りを勉強する人は多いですね。むしろいまは、ユーザーと接点のあるインターフェースをつくれる人のほうがすごく求められている状況にあると思います。

――統合デザイン学科は、どういうことを教える学科なんですか?

菅:大きなテーマは、「広い意味でデザインというものをもう一度捉え直そう」ということです。例えば、ポスターとプロダクトはまったく違うものですが、結局のところ「人間が見て触れるもの」という根幹の部分では同じです。ポスターであれば、印刷物全体の佇まいや表現も重要ですが、そもそも「人に見てもらうもの」ということを意識するのが一番大事です。駅に貼られるのか、個人の部屋に貼られるのか、学校に貼られるのか、それぞれ目的も違うものになるので、環境と印刷物とのインタラクションや、印刷物と人とのインタラクションを考えながらつくっていかなければならない。

――表現の前に、まずそもそもの部分を考えていくことから教えていると。

菅:駅に貼られる場合は、見る人はものすごいスピードで歩いていくので、視野の端っこで見るもので、真正面でじっくり見られるということはほぼ考えられない。そういった環境において、「どういうポスターであり得るべきか」というところまで考慮に入れなくてはならないんです。統合デザイン学科では、表現が人と環境、物との関係性の中でつくられるというところからデザインを考えています。

――どういった教育方針を取られているのでしょうか。

菅:人間は自分が知らないことは考えられません。だから、デザインというものを考えるために、あらゆる領域の表現を知ってもらおうとしています。例えば、「新しい消しゴムのデザインをしてください」と言われたら、ある程度はイメージできますが、「新しい臓器のデザインをしてください」と言われたら、かなりのリサーチが必要になる。つまり、一度でも触ったことがあったり、考えたことがあれば、自分の範疇にちょっとでも入るわけなので、新しいデザインを生み出すにはさまざまな知識や概念、技術を身につける必要があるのではないか、というのが僕らの考え方です。だから、1〜2年生の基礎教育の中で、なるべく多くのものに触れられるようなカリキュラムをつくっています。

茂出木:オンスクリーンメディア系の中村勇吾さんの授業もあれば、プロダクト系もあるし、本当にひと通り全部やっていますよね。

菅:ひと通りやったことがある状態になると、何かをつくるとなった時に、すごくフラットに考えることができるんです。どういうメディアを選択すればいいのか、どういう表現方法を選択すればいいのか、最適なものを選ぶことができる。広い視点でジャッジするために、一度“経過”した方がいいはずだ、という考えでやっています。1〜2年生の間は基礎教育で、3年からより実践的な、「プロジェクト」というゼミみたいなものがはじまります。

茂出木:話を聞いていると、入学したくなりますね(笑)。

菅:3年生の時に、どの先生のプロジェクトに入るかを決めるんですね。例えば、僕と中村勇吾さんは、オンスクリーンメディアなどの動的な情報を扱う。学科長の深澤直人さんだったら、プロダクトに軸足を置きながら、環境や映像などに関わってくる。どこに軸足を置いた人と一緒に取り組みたいかということを、それぞれの学生が選んでいくスタイルになっています。

茂出木:ゼミの期間が2年あるのはいいですね。日藝では、4年生からゼミがスタートします。3年生がトライアル期間のようになっていて、グラフィック、メディア、インタラクション、インダストリアル、プロダクト、スペース、アーキテクチャの7方向にじんわりと分かれていき、4年生の頭に最終決定をすることになります。実際、4年生になると就職活動に必死になってしまうケースもあるので、3年生から専門的に決めて取り組めるというのはいいですね。うちも真似したいです。

どうやって「武器」をもたせるか

――従来の教育では、もちろん地域・産官学連携などもありましたが、基本的には「大学にいる時は学び、社会で実践する」という仕組みになっていたと思うんです。おふたりは、教育においてその実践までも考えていらっしゃいますか?

菅:実践というよりも、とにかく、技術や考え方など、将来戦うための「武器」を集めていくわけです。「武器」は、単体では機能しない可能性があります。例えば盾だけを持っているよりも、剣と組み合わせたほうが戦いやすい。統合デザインでは、1・2年生の段階では個別の武器について学び、3年生の段階で「こう組み合わせて対峙すればいい」と学び、そうした知見を社会に出てから活かしていくステップを想定しています。

――武器の使い方や組み合わせまでも教えていくわけですね。

菅:それは最低限のことで、結局のところ一生勉強は続くじゃないですか。だから、本当は「ずっと学び続けなきゃいけない」というところまで、伝えられたらいいんですが。

――茂出木さんは、そういった「武器の持たせ方」を意識されていますか?

茂出木:僕は常に大学にいる専任ではなく、非常勤講師として週に1回ゼミを開いてます。普段、オンスクリーンメディアのディレクションをを中心に活動しているので、授業内容も実践的です。オンスクリーンメディアには時間軸を持ったデザインが必要だし、エンターテインメントな映像も必要だし、様式美に近くなってきている「デザインのメソッド」も必要。オンスクリーンメディアはいろんな要素を入れられるので、あらゆる知識を入れていかないといけないと話します。また、オンスクリーンメディアに強く興味を持っている学生には、僕の事務所にインターンやアルバイトとして来てもらい、実際に現場に出ることで、授業でやったことの意味を再確認してもらったり。

――デザインのスキルはどうやって習得していくのでしょうか?

茂出木:UIデザインにおけるピクセルやマージンの制御などの基礎もやりますが、実践的な課題が多いです。例えば、新しいサービスの企画・設計からはじまり、アプリケーションをプロトタイプに落とし込むまでの一連のプロセスを追ってみるなど、具体性が高いです。これは僕の個人の感想なんですが、「デザイン性」に魅力を感じてつくっている学生が少ない印象なんですね。彼らの中にはゲームとか漫画とか映画が幼い頃から積み上がっていて、自分がつくりたいのはストーリーとかエンターテインメントであると。そういう興味と、僕が教えるUX・UIデザインにいかに置き換えていくかと言う実験をしています。例えば、「〇〇を解決するアプリケーションを設計してみよう」というよりも、「通勤通学中に使うアプリケーションを設計してみよう」と物語性で語りかけたほうが、彼らはピンと来てくれる感じがありますね。

菅:そうしたストーリーの具現化は、「人間をどう理解するか」ということにはじまる話だと思っています。人間は「動機」があって「行動」を起こす。動機は言語化されて理解されている場合と、本能みたいに隠蔽されている場合と、二通りがありますが。ストーリーというのはその動機の動線みたいなもので、何をしたいと思って、どう動くのかという本質的なものですから、人間理解をしていって、丁寧に、心地よさをつくり上げていくというのがデザインや表現物の役割になっていくと思います。

観察、そして世界をどう見るか

茂出木:菅さんの授業では「観察していく」ことが多いのではないですか?「この状況では、同じメディアでも別に見えるよね」というように、「人間の感じ方」を見ていく訓練というか。

菅:1年生の段階では特に見るということを積極的に教えています。世界をどう見るか、自分をどう見るか、他の人の行動をどう見るか、世の中の関係をどう見るか、というのが「見ること」の基本です。いわゆるデッサンも「見る技術」をトレーニングするものですが、もう少し動的な環境に着目しています。人間というのは常に動いていて、世界も常に動き続けていて、その中で自分もちょっと動けば、全部関係性が変わってしまう。そういう中で、「何に着目すべきか?」を丁寧にテーマを与えながらトレーニングをしています。

――どういったトレーニングが行われるのですか?

菅:例えば、「4点で支えるもの」など、学生がそれぞれ何かしらのテーマを定めて、それにまつわるものを100個集めてくることを課したりしています、4点で支えているという抽象的な視点から見ると、テーブルもそうだし、眼鏡もそうだし、いろいろなものが見えてくる。いままで関係がなかった眼鏡とテーブルが、4点で支えるという共通点において繋がってくる。

――世界の見方が変わってきそうですね。

菅:一見すると無関係なものを世界の中から取り出すには、「ある特徴に着目すればいい」ということがわかってきます。例えば違和感を感じたものを結びつけることで、どういうふうにクリエーションしていくのかトライしたり。一見、ものづくりとはちょっと離れているように見えるかもしれませんが、そこをいくのが一番王道で、最初にやるべきだと思っているんです。

茂出木:それはなんという授業名なんですか?

菅:「インターフェース基礎」です。インターフェースというとデジタルなUIをつくるように思われがちですが、本来の「境界線」という語義に戻って、環境と情報と人間の接点について学ぶ授業です。要するに、情報を粘土や紙のような“素材”として扱えるようになってほしいと思っているんです。私たちは、感覚器を通じて周辺環境からあらゆる情報を読み取っているので、情報をどうやって扱うかということが、おそらく、デザイナーにとって重要な能力です。それは、どんな分野に行っても同じです。ですので、グラフィックデザイン基礎と、プロダクトデザイン基礎と、インターフェース基礎の3つを必須にしています。

――そういう訓練をすると、学生というのは目に見えて変わっていくものですか?

菅:だんだん変わっていくということはなくて、膨大に考え続けた結果、ある日突然変わってくる感じがあります。「これってインターフェース(の授業)っぽいね」って言い出したり。ものの見方やどういうふうに考えてアプローチするかを徹底的にやっているので、「それっぽい」という感覚的に概念を捉えている言葉が生まれてくる。そういう教育をすることで、これまでとは少し違った考え方をする学生が世の中に出ていくんじゃないかなと思っているんです。

茂出木:「ある日突然変わる」というのは同感ですね。彼らは吸収している途中だから、今日学んだことで、いきなりガラッと変わっちゃう、みたいなことがあるんです。昨日までは「ゲームをつくりたい」と言っていた子が、何かを吸収した途端に「UIをつくりたい」と、人が変わったようになってしまうこともあったりして。

菅:いきなり火が点くみたいなことがありますよね。

茂出木:そうそう。だから、この子は「もうデジタルに興味ないな」とは判断できなくて、いかに吸収させて、いろいろな可能性を広げていくのかというのがすごく大事になってきます。

デザインは社会に定着させることが前提

――それでは、具体的に授業でどんなものをつくっているのか教えてください。

茂出木:例えば、サイト全体やアプリケーション全体をつくってみるのですが、最初はみんなが使い慣れているflashやPhotoshop、Illustratorを使っていたんです。そうすると、みんなトーン&マナーをつくることだけに走ってしまって、アプリ全体にロジックが行き届いているのか、ルールが行き届いているのか、ということに辿り着けない。そこでAdobe XD(以下、XD)を使いはじめた。途端にすべてが解決したんです。XDを触っていると、トーン&マナーに頭がまわらないというか、ページ単位でデザインを見ずに、遷移を整理することに意識がいくので全体がデザインされていく。それがすごくおもしろいですね。いまはXDで設計したうえで、その次にアートディレクションの時間、トーン&マナーをつくる時間をつくっています。そうすることで、切り分けて考えられるようになって。明示的にツールを変えるというのも効果的ですね。

――学生自身がきちんとユーザ体験を考えて、その後にトンマナも自分で整えられるというのはすごいですね。

茂出木:トンマナをつくってからXDに戻る子もいます。XDが入ったおかげで、UXを前提にしたUIデザインがつかめるようになったという。菅さんはどうですか?

菅:UXで特定のツールというのはまだ考えていなくて。もう少し根っこの部分のトレーニングに力を入れているんです。2年生の「インタラクション」という科目では、僕と勅使河原一雅さん、奥田透也さんの3人で、超基礎の、相互作用から教えています。やはり、人間の行為とか振る舞いを観察するところからものづくりをしようということで、最初に「ありえない状況」というテーマでコマ撮りアニメーションをつくってもらいます。

「両替」渡辺光(統合デザイン学科)

「Seal」山口大誓(統合デザイン学科)

菅:また、後期ではアニメーションを操作するという課題を出すのですが、こうした作品をつくる時には、アドビのAnimate CCを使っています。奥田さんがつくったフレームワークは、プログラムが苦手な学生でもアニメーションを操作するためのコードが書きやすい環境になっています。Animate CCは、アニメーションをつくる人はもちろん、簡単なインタラクションを学ぶ人にとっていいツールですよね。自分の得意なツールで描いた絵をそのまま制御することができる。ちなみにフレームワークはgithubで公開しているので、誰でも使ってもらうことができます。

▼多摩美術大学統合デザイン学科 2016年度「デザインベーシック Ⅱ インタラクション」講義用プログラミング教材

茂出木:この課題は基礎フェーズで出したものです。「一番身近なディスプレイを違う形に捉えてみよう」というテーマで、受講生全員、25人のスマホの中で映像が繋がっていくアニメーションをつくりました。ひとり3秒という短い尺のアニメーションをつくるのですが、つなげると時間尺も物理的なディスプレイとしても長くなります。

Network Design 1|長いディスプレイ

――かつてのデザイン教育は、「自分らしい表現」を求められるような漠然とした課題が多かった印象があります。おふたりのお話をうかがっているとすごく実践的だし、「なぜこれをつくらなければいけないのか」ということを授業にされているので、言ってみればデザインへの貢献度が非常に高い授業をされていると感じました。

菅:デザインというのは、「社会に定着させること」いうことが前提となっている分野ですよね。だからこそ、自分が教員になったときに、これは一過性のものではなく、本質的に必要だからやっておいたほうがいいだろうということを教えています。

茂出木:僕の授業では、コミュニケーションデザインが軸にあるので、「デザインとは伝えるための技術」として教えているんです。伝わらないと意味がない、ワークしないと意味がない、となる。伝える方向、伝わり方、強弱などのニュアンスも考えなければいけない。となると、現実の社会や人を見据えてつくることが重要になります。

――何が有効で機能するかを考えて授業をされているんですね。学生たちがうらやましいです(笑)。

菅:統合デザイン科にも、深澤直人さんのことをまったく知らずに入ってきて、いきなり深澤さんの教えに触れるということがあって、それはすごくおもしろいなと。大学って、そういう出会いの場所ですから。誰に教わるかとか、誰と学ぶかというのはすごく重要です。

茂出木:日藝も、デザイン学科に来ているんだけど、「憧れのデザイナーがいる」ということはほぼないです。やっぱりエンターテインメントをつくりたいとか、何かをつくりたい、ということで入学してきますね。

――逆に教えていて「難しい」と感じることはありますか?

菅:学生の構想のサイズを大きくすることが課題だと思っています。何か新しいことを構想するということのサイズ感が、どうしても自分の身の回りのものという規模になってしまう。「これをつくることで社会がどう変わるのか」、「人々の目がどう変わるのか」を、聞いたり、考えなさいということはすごく言います。

デザインというのは非常に強力な技術で、世界中の人に通用する可能性があるのに、周りの3人くらいのことしか考えていなかったりとかする。人類とは何か、人間とは何かと、デザインをする時には本当は考えるべきなんです。そうなってくると、認知科学のような「ものを見るメカニズム」から知らなくてはいけない。その見るメカニズムというのを利用することによって、僕たちはどういう表現がつくれるだろうか?と考えて、何かをつくってきてもらう。例えばなにか技術を教えるとしても、3Dプリンタを使った「レゴにくっつくような新しいパーツをつけて、レゴ自体の遊びを拡張しなさい」という課題を出して、説明用映像もつくらせることで、単に技術を学ぶだけでなく、その裏にあるルールを設計するという考え方も身につけてほしいと思っています。

茂出木:課題自体が、菅さんの作品のようになっていますね。

菅:本当は「課題のつくり方」を学んでほしいんです。どういう課題を自分に課したときに、自分が学んでいけるのか、テンションが上がるのか、良いものがつくれるかという。ある種のフレームみたいなものを、自分でつくってもらうのが最終的な目標です。

茂出木:ちょっと、目から鱗的な感じがありますね。どうしても、自分が教えている学生たちの得意ジャンルを伸ばすためには、引き出すためにはどうしたらいいだろうという考え方をしていたので。

――おふたりのお話を聞いてたら、完全に入学したくなりました(笑)。今日はありがとうございました。

取材・文:齋藤あきこ 撮影:高木亜麗 編集:瀬尾陽(MonitoriPlovdiv)
タイトルデザイン:有馬トモユキ(TATSDESIGN)
制作協力:アドビ

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